Adobe® Photoshop®のグラデーションマップを使用してダブルトーンの写真を作る方法はAdobeのサイトでも紹介されており、結構有名で、手順も簡単です。
しかし、作ったダブルトーン画像を2色印刷で使いたい場合、どのようにデータを操作するべきか迷う場合が多いでしょう。
ここではRGBの状態で作ったダブルトーン画像を2色印刷用のデータに変換する方法をご紹介します。
Photoshopのグラデーションマップでダブルトーンの写真を作る方法
Photoshopのグラデーションマップを使ってダブルトーンの写真を作る手順は簡単です。
RGBの画像データを開きます。
メニューから[レイヤー>新規調整レイヤー>グラデーションマップ]と進み、グラデーションマップの調整レイヤーを乗せます。
グラデーションマップのプロパティのグラデーションのバーをクリックし、グラデーションエディターの画面でカラー分岐点の色や位置を変えたりやカラー中間点の位置を変えたりして好みの色合いにします。
これでRGB状態のダブルトーンの写真の完成です。
ウェブなどでRGBのまま使う場合
ウェブなどでRGBの状態で使うなら、画像を統合し、sRGBなど用途に合ったプロファイルに変換し、用途に合わせてサイズ変更し、シャープネス処理が必要なら行い、用途に適した画像形式で書き出して使えます。
CMYK4色のカラー印刷で使う場合
CMYK4色のカラー印刷で使うなら、画像を統合し、予定している印刷条件に合ったCMYKカラープロファイルに変換し、使用するサイズに変更し、シャープネス処理が必要なら行い、PSDなどで保存して完成させます。
2色印刷をする場合このままでは使えない
2色印刷を行うなら、2つの版だけを使った画像データにしなければなりません。
CMYKに変換して2版を捨てると、RGBで完成させたダブルトーンの色が変わってしまいます。
そこで、別の処理が必要になります。
作業の準備 「カラー設定」のドットゲインを設定する
印刷におけるドットゲインを考慮しなければ、希望通りの仕上がりになる画像データを作ることができません。
そこで、作業の前に「カラー設定」でドットゲイン関連の設定を適切に行います。
Photoshopのカラー設定で、「作業用スペース」の「スポット」の欄を、予定している印刷条件のドットゲインに合わせて設定します。
例えばドットゲイン15%くらいの印刷条件で2色印刷を行う予定なら、「Dot Gain 15%」に設定します。
「作業用スペース」の「グレー」の欄も念のため「スポット」と同じ数値に設定しておきます。
「作業用スペース」の「CMYK」の欄で、「スポット」に設定したドットゲインと近いドットゲインを示すCMYKカラープロファイルを選択します。
例えば「スポット」をドットゲイン15%にしたなら、「CMYK」はドットゲイン15%前後の印刷条件を示したCMYKプロファイルである「JapanColor2001Coated」か「JapanColor2011Coated」にしておけば問題ありません。
オフセット印刷の場合、ある程度新しい印刷設備ならドットゲインは15%前後くらいの場合が多いです。
一方、古い設備の場合はドットゲイン20%以上などかなり濃く印刷されてしまう場合もあります。
参考記事
RGBのダブルトーン写真を2色印刷用に変換する手順の一例
1.RGBでダブルトーンの写真を作る
2色印刷のことは考えずに、グラデーションマップを使って単純にダブルトーンの写真を作ります。
2.CMYKにプロファイル変換する
メニューから[編集>プロファイル変換]と進み、作業用CMYKにプロファイル変換します。
3.CMYKのうち使う版を決める
CMYKの4版のうちいずれの2版を使用して画像データを作るかを決めます。
先ほど作業用CMYKに変換した画像のCMYKの各チャンネルを見てみます。
CMYKの4版のうち、できるだけ多くの情報を持っている2版を選びます。
今回の例ではM版とY版に絵柄が濃く記録されています。
C版は絵柄が見えますが薄いです。
K版はほぼ白いです。
そこで、M版とY版の2版を使うことにします。
4.チャンネルミキサーで2版に分ける
「チャンネルミキサー」を使い、4版に分かれている情報をM版とY版の2版に割り振ります。
メニューから[レイヤー>新規調整レイヤー>チャンネルミキサー]と進みます。
M版とY版の2版だけに振り分ける場合は、C版(シアンのチャンネル)とK版(ブラックのチャンネル)はCMYKすべて0%にします。
M版とY版の2版だけに振り分ける場合は、とりあえずマゼンタのチャンネルのマゼンタ、イエローのチャンネルのイエローは100%にします。
ここまでの処理で単純にC版とK版を捨てた状態になります。
はじめにRGBモードで作ったダブルトーンの写真と、CK版を捨てた画像を比較します。
CMYKデータの方はマゼンタとイエローで作っているので、当然ながらRGBモードのダブルトーンの写真と異なる色をしていますが、問題ありません。
色はあまり気にせずに、CMYK画像の色の濃さが元のRGB画像と同じくらいになるように、チャンネルミキサーでマゼンタチャンネルとイエローチャンネルを調整します。
シアン、ブラックの二つのチャンネルは変更しません。
今回はマゼンタのチャンネルは変更せず、イエローのチャンネルにシアンの成分を足して、元のRGBデータと似たような濃さにしてみました。
5.特色インクを決めてデータ上で色を再現
元のRGBデータに近い仕上がりにするための特色インクを選び、画像データ上で印刷の色を再現します。
メニューから[レイヤー>画像を統合]と進み、チャンネルミキサーの調整レイヤーが乗った状態のCMYK画像を統合します。
「チャンネル」パネルでマゼンタチャンネルを選択し、「新規チャンネルを作成」のボタンにドラッグするなどしてマゼンタチャンネルを複製します。
複製したチャンネルをダブルクリックし、「チャンネルオプション」で「スポットカラー」を選択し、「不透明度」を0%に設定します。
再び複製したチャンネルをダブルクリックし、「スポットカラーチャンネルのオプション」で「カラー:」の色のパッチをクリックします。
「カラーピッカー(スポットカラー)」で「カラーライブラリ」をクリックします。
「カラーライブラリ」の画面の「ライブラリ」で、特色インクのメーカー、種類を選びます。今回の例ではDICカラーガイドを選びました。
特色一覧に表示されたインクの中から、RGBで作ったダブルトーンの写真の2色のうちの1色に近いと思えるインクを選び、OKをクリックします。
OKをクリックして画像に戻ると、片方のチャンネルに特色が適用された状態になります。
もう一方のチャンネルも同様の操作で特色インクを適用します。
「チャンネル」パネルでCMYKの各チャンネルの表示をオフにして、スポットカラー2版の表示のみオンにします。
この結果、特色インクで印刷結果に近い状態が再現されます。
この結果をみると、RGBで作ったダブルトーンの写真とかなり違う色になっています。
そこで、より近づくようにインクを選び直したり、トーンの調整をしたりします。
スポットカラーの各チャンネルを選択し、メニューから[イメージ>色調補正>レベル補正]と進み、チャンネルに直接レベル補正をかけてみます。
特色インクを、元の写真の色に近いものに指定しなおしてみます。
たいていはDICなりTOYOなり、選べるカラーチップが指定されたりしていることが多いと思うので、指定されたインクの中から選び直します。
ここではPANTONE Solid Coatedから選びなおしてみます。
RGBモードで作った元のダブルトーンの写真はRGB画像であり、今作ったデータは特色2色の印刷を再現したもので、色の表現の方法が異なるので全く同じ見た目にはなりません。
そのことを考慮すると、元の写真とかなり近い見た目になったのでこれで完成にします。
6.CMYK画像として完成させる
たいていの場合、特色2色の印刷を行うためのデータはCMYKのデータで作ります。
そこで、特色2色を再現したデータを一般的なCMYKデータに変えます。
画像を全選択してコピーし、メニューから[ファイル>新規]と進み、プリセットで「クリップボード」を選んでOKをクリックし、今操作している画像と同じサイズの新規ドキュメントを作成します。
メニューから[イメージ>モード>CMYKカラー]と進み、作業用CMYKのプロファイルのCMYK画像に変換します。
先ほど特色インクを再現したスポットカラーのチャンネルの一方を選択し、全選択してコピーします。
新規ドキュメントのCMYKのいずれかのチャンネルを選択し、ペーストします。
同じようにもう一つのスポットカラーもコピー&ペーストします。
実際は他の部署や外部の取引先と確認が必要
実際の仕事なら、特色のインクをこちらで選んで良いのか、別の人が選ぶのか、どのインクをどの版にしてデータを作成するのかなどを確認する必要があります。
選んで良いインクの確認
会社によって、DICなりTOYOなり、特色を指定するときのチップが決まっている場合が多いでしょう。
特色インクを選ぶにあたり、どの会社のインクを指定して良いのかを確認します。
誰がインクを選ぶか確認する
仕事によって、特色インクを選ぶ人は色々でしょう。
営業部で選ぶ場合、外注先のデザイナーが選ぶ場合も多いでしょう
あなたが選んでください、と言われたら選び、別な人が選んだインクの番号が指定された場合はそれに従うことになるでしょう。
どのインクをどの版にしてデータを作成するのか確認する
たいていの場合、シアンに似た色の特色インクならC版で、マゼンタに似た色の特色インクならM版で、イエローに似た色の特色インクならY版で、黒っぽいインクならK版でデータを作る場合が多いでしょう。
しかし、凝ったデザインの印刷物なら、CMYKのどの版とも似ていないインクを使う場合もあるでしょう。
また、CMYKのプロセスインクと似ている色の特色インクであっても、必ずCMYKの似た色の版でデータを作るとは限りません。
どちらかというとマゼンタに似ている特色インクをM版にして画像を作り、デザイン・レイアウトの部署の人に渡したところ、レイアウトソフト上ではその特色インクをK版にしてデータを作っていた場合、印刷は失敗します。
そのため、どのインクをどの版にしてデータを作るかの確認は重要です。
以上、RGBの状態で作ったダブルトーン画像を2色印刷用のデータに変換する方法をご紹介しました。
参考記事