仕事などで色にシビアな物を扱っている場合、色を測定したくなることもあるでしょう。
しかし、長さや重さなどと違い色は人の感覚も関係した量であり、色の測定の方法はあまり有名ではありません。
ここでは、物の色の測定の方法をご紹介します。
色を測定するための理屈
理屈を知らなくても色を測定できます。
しかし、色を測定できるとすれば、その基礎になる理論があるということです。
色彩工学などの分野の専門書に理論が説明されていますので、そういった本をご参照下さい。
色彩工学の専門書の例
参考記事
色は測色器で測定できる
色は測色器を使用して測定することができます。
どのような測色計を使えば良いか
測色計には色々あり、一見すると何が違うか良くわからないかもしれません。
細かい話は省略し、おおまかには以下のような区別があります。
物体の反射光の測定用と、光源の測定用
蛍光灯やLED照明など光源そのものの測定ではなく、紙や布や板など光を当てた物体の反射光の色を測定する機能のある測色計があります。
一方、光源そのものを測定する機能がある機器もあります。
物体の色を測定する場合は、反射光の測定が可能な機種を使います。
光を当てて受光する部分の構造 光学幾何条件
物体の色を測定する場合、測色計の光源から物体に光を当てて、反射してきた光を受け取って色を測定します。
そのときの、光を当てて反射光を受光する部分の構造に種類があります。
カタログなどでは「光学幾何条件」として種類が記載されています。
45°の角度から光を当てる方式
物体に45°の方向から光を当てて反射光を受光する方式です。
紙など表面がある程度平らな物体の測定に使います。
カタログの光学幾何条件の欄に「45º/0º」などと書かれていれば、45°の方向から光を当てる方式です。
積分球を使う方式
積分球を使って物体に全方向から光を当てて、反射光を受光する方式です。
絨毯など、表面があまり平らでない物体の色の測定に向いているとのことです。
カタログの光学幾何条件の欄に「d/8°」などと書かれていれば、積分球を使う方式です。
選べる光源の種類
物体の色を測定するには、物体に光を当てる必要があります。
物体の色を測定するときは、どういう光源を使用するかを選ぶ必要があります。
測色計によって、選べる光源の種類が違います。
光源の種類が多いものも、少ないものもありますので、自分が測定したい条件に合う光源が選べる測色計を使用する必要があります。
紛らわしい注意点 実際の光源と、測定の光源として選べる光源の違い
カタログなどに、光源として「●●タングステンランプ」と書かれていたりしますが、この欄を気にするのは難しいのでとりあえず置いておきます。
上記の光源の他に、「イルミナント」などと書かれた欄があり、AやCやD65やD50などと書かれています。
この欄が測定時に光源として選べる光源の種類です。
D50の光源で見た物体の色を測定したい場合は、この「イルミナント」などと書かれた欄にD50があれば大丈夫です。
色を測定するおおまかな流れ
色を測定する作業の、おおまかな流れの一例を以下にあげます。
手順1 反射光の色が測定可能、光源にD50とD65が選択可能、光学幾何条件は45°/0° の測色計を用意
物体の反射光の色が測定可能で、光源としてD50とD65が選択可能で、光学幾何条件は45°の角度から光を当てる方式、の測色計を用意すれば、一般的な色の測定はできます。
もし絨毯など表面が滑らかでないものの色を測る場合は、光学幾何条件が「d/8°」などと書かれた積分球方式のものを用意します。
手順2 光源にD50かD65のどちらかを選ぶ
何か物体を普通の蛍光灯で照らせば普通の色に見えますし、ろうそくの火で照らせばオレンジっぽく見えます。
そのように、物体の色は物体に当てる光の特性によって変わるので、物体の色を測定するときは物体に当てる光がどういう光か決めます。
たいていは、測色計の設定でどういう光源を使うか選べるようになっています。
光源としてはD50かD65が一般的です。
D50は昼白色の蛍光灯のような色、D65は昼光色の蛍光灯のような色です。
手順3 視野の広さを決める
人が物体の色を見るとき、狭い範囲だけ見る場合と、広めの範囲を見る場合で少し色の見え方が変わります。
そのため、物体の色を測定するときはどのくらいの広さの視野で見たときの色を測定するかを決めます。
たいていは、測色計の設定で視野の広さを選べるようになっていますので、2°視野を選んだり、10°視野を選んだりします。
手順4 表色系の種類を決める
色を数値で扱うために、その土台になる表色系というものがあります。
色々種類がありますが、とりあえず有名で色々なところで使われているCIELAB均等色空間のL*a*b*の値が分かれば足ります。
たいてい、測色計で表色系を選ぶメニューがあるので、よく分からなければL*a*b*を選ぶと無難でしょう。
手順5 測定する
測定するボタンなどがあるので、押して測定します。
液晶表示部等に測定結果が表示されます。
以上で物体の色の測定は完了です。
注意点 D65の光源の使いにくい点
D65という光源は色温度が約6500Kで、色々なところで標準で使われています。
しかし、使いにくい点があります。
それは、高演色性の照明で色温度が6500Kのものがあまりないということです。
物体の色を測定する他に、作業場の照明も正確に管理して一連の作業を進めたい場合、測色するときの光源の色温度と、その物体を見て作業する作業場の照明の色温度が違うと問題があり、うまくいきません。
高演色性の色評価用照明はほとんどが色温度5000Kです。
そのため、作業場の照明は5000Kにし、物体の測色時の光源も5000KのD50を使うと、うまくいきます。
測色計の例
RM200QC ポータブルイメージング分光色差計
D50の光源が選べないらしいです。それ以外は大変使いやすそうです。
- 光学幾何条件
- 45/0
- 選べる光源と視野
- D65/10°視野、A/10°視野
メーカーのページ
メーカーの動画
片手で簡単操作 小型色差計RM200QC(アールエムニヒャクキューシー) 操作イメージ|X-Rite Japan
Ci6xシリーズ ポータブル分光測色計
光源にD50も選べて、積分球方式で、視野に2°も10°も選べて、申し分ありません。
価格は販売店に問い合わせてみないとわかりません。
- 光学幾何条件
- 積分球方式
- 選べる光源
- A、C、D50、D65、他
- 観察者の視野
- 2°、10°
価格は不明です。
メーカーのページ
メーカーの動画
X-RiteCi6xシリーズポータブル分光光度計|X-Rite Color
日本の販売代理店のサイト
コニカミノルタ CM-700d/CM-600d
機能は申し分ありませんが、ある程度の予算のある企業でないと買えなさそうです。
- 光学幾何条件
- 積分球方式
- 選べる光源
- 豊富です
メーカーのページ
メーカーの動画
CM-700d分光光度計-コニカミノルタセンシング|Konica Minolta Sensing Americas
下記の通販サイトで販売していました。
参考リンク
EPSON® SD-10
エプソンのSD-10で色の測定をできるようです。
また、エプソンの大判インクジェットプリンター用のRIPと組み合わせて色々できるらしいです。
参考リンク
メーカーの動画
製品紹介の動画では動画マニュアルのようです。測定器の雰囲気は分かります。
この動画はカラーターゲットの連続したパッチを読み取る場合の説明ですが、SD-10は「スポットモード」で物体の色を測定したりもできます。
How to Scan the Color Patches (Epson SD-10 CMP0344-00)|Epson Video Manuals (LFP)
以上、物の色の測定の方法をご紹介しました。
参考記事