AdobeRGBをほぼカバーしているカラーマネジメントモニターの中では価格が低めの製品にEIZO®のColorEdge® CS2400Sがあります。
フォトレタッチ用途の側面から、CS2400Sの主な仕様についてみてみます。
機器などを買うときの参考情報
電子機器の製造には深刻な国際問題も関係しています。
当然ながら、機器を使用する私たちユーザーもそれら国際問題の当事者の一人です。
仕事や創作活動などを意義あるものにするため、物を買う場合は社会的責任を果たしているメーカーや店の製品を選びましょう。
武装勢力や児童労働と関わりのある原料を使っていないかどうか
報道によれば、電子機器などの製造に必要な鉱物は武装勢力の資金源になっている鉱山で生産されたり、児童労働につながっているものもあるということです。
参考
華井和代「紛争下の性暴力の構造と日本の取り組み」ーデニ・ムクウェゲ医師来日講演会:平和・正義の実現と女性の人権
デニ・ムクウェゲ「コンゴ東部における性暴力と紛争鉱物(日本語字幕)」ーデニ・ムクウェゲ医師講演会2016
【アムネスティ】スマートフォンに隠された真実:あなたのケータイ、「児童労働」につながっていませんか?(日本語字幕付※設定をONにしてください)|アムネスティ日本
参考リンク
参考書籍
「人新生の「資本論」」で先進国から他の貧困国へ環境汚染その他の被害が押し付けられ外部化されていることが説明されていました。
電子機器などを購入する場合、紛争や児童労働などに関わりのない鉱物を使用しているかどうかなど、製造メーカーがきちんと管理された道筋で原料を調達しているかどうかを確認すると良いでしょう。
ウェブサイト等で原料調達に関する取り組みについて記載し、調査結果などを公開しているメーカーもあります。
使用後の製品の回収について説明されているかどうか
物が壊れたら、パソコンやPCモニター等ならPCリサイクルなどに出す、その他の電子機器なら小型家電リサイクルなどに出す、というように法律に従って回収に出す必要があります。
メーカーによっては使用後の機器の回収方法を分かりやすく説明したり、分かりやすい回収申し込みフォームを用意したりしています。
一方、使用後の機器の回収について丁寧とは言えない説明しか載せていないメーカーもあります。
きちんと回収して持続可能な事業活動をしようとしているまじめなメーカーを選びましょう。
CS2400SはAdobeRGBカバー率99%の比較的手頃な価格のカラーマネジメントモニター
CS2400SはAdobeRGBカバー率99%、24.1型、測色器内蔵ではないカラーマネジメントモニターです。
カラーマネジメントモニターは価格の高いものも多いですが、CS2400Sは比較的手頃な価格の製品です。
まずは良い中古品を探すのも良い
液晶モニターは良い中古品もあるので、まずは良い中古品を探してみるのも良いでしょう。
もし良い中古品を購入できれば、新品を1台作らずに済むので環境負荷を大幅に低くできます。
CS2400S
キャリブレーションを行うのに必要な別売りの測色器の一例 EX4
CS2400Sと測色器EX4等のセット
表示色域 AdobeRGBカバー率99%
色域についてはAdobeRGBカバー率99%です。
フォトレタッチ作業に十分です。
AdobeRGBをほぼカバーしているモニターなら、AdobeRGBのデータを扱うときにデータの色をあまり狭く変換せずに表示できるので、シビアな色の調整などを行うときに便利です。
補足説明 表示可能な色域がAdobeRGBをカバーしていなければAdobeRGBのデータを扱えないわけではない
ディスプレイの表示可能な色域がAdobeRGBをカバーしていないとAdobeRGBのデータを扱えない、というわけではありません。
カラーマネジメントシステムの仕組みは、AdobeRGBの色域を持ったデータをsRGBしか表示できないディスプレイでも扱えるようになっています。
参考記事
ウェブサイトを見るときなど、AdobeRGB色域で支障がある時は「sRGBモード」にすると良い
一般的なsRGBくらいのディスプレイで自然に表示されるものが、広色域のディスプレイではかなり彩度が高く表示されたりすることがあり得ます。
例えば、カラーマネジメントに対応していないウェブブラウザを使ってウェブサイトを閲覧するときなどです。
そのような場合は、自分のディスプレイの色域が他の多くの人のディスプレイより広いために逆に使いにくい、ということになります。
そこで、モニターの表示モードを「sRGBモード」にすることで解決できます。
専用キャリブレーション用ソフトは「ColorNavigator7」
キャリブレーション用ソフトウェアは、基本的にはColorEdge専用のキャリブレーションソフトである「ColorNavigator7」を使います。
「ColorNavigator7」を使うことで、ハードウェア・キャリブレーションができます。
ハードウェア・キャリブレーションとは
ハードウェア・キャリブレーションとは、おおまかに言うと、パソコンから送られてくる映像の信号を変更せずに、ディスプレイの内部で白色点・ガンマ・輝度を調整する方法です。映像の信号を減らさずに調整できるので画質が劣化しません。
「ColorNavigator7」以外のキャリブレーション用ソフトは使えるのか
「ColorNavigator7」以外のキャリブレーションソフトも一応使えます。
例えば、Calibrite ColorChecker Display Proの付属キャリブレーションソフトなども使えます。
しかし、「ColorNavigator7」以外のキャリブレーション用ソフトを使用した場合はソフトウェア・キャリブレーションを行うことになってしまいます。
ハードウェア・キャリブレーションを行えるカラーマネジメントモニターを使っているのにソフトウェア・キャリブレーションを行うなら、カラーマネジメントモニターを使っている意味があまりなくなります。
よって、CS2400Sをキャリブレーションをして使うなら通常は「ColorNavigator7」を使ってハードウェア・キャリブレーションを行います。
※ColorNavigatorはColorNavigator7以外にも何種類かあります。ColorNavigtor7以外のColorNavigatorがCS2400Sに対応しているかどうかはメーカーのサイトなどをご参照下さい。
ソフトウェア・キャリブレーションとは
ソフトウェア・キャリブレーションとは、おおまかに言うと、パソコンから送り出される映像の信号自体の各成分を減らして白色点の色温度・ガンマ・輝度を調整する方法です。映像の信号を減らして調整するため、少し画質は劣化します。
CS2400Sは測色器外付けのディスプレイ
「CS2400S」は測色器が内蔵されていません。キャリブレーションするときは外付けの測色器を使用します。
どのような測色器が使えるのか
「ColorNavigator7」に対応している測色器であればハードウェア・キャリブレーションができます。
以下は使用可能な測色器の一例です。
(EIZO®のウェブサイト内の「ColorNavigator7」の紹介ページに使用可能なキャリブレーションセンサーの一覧があります)
ColorNavigator7のページ
ディスプレイのキャリブレーションをするだけなら
「ColorNavigator7」の公式ページによれば、ディスプレイのキャリブレーションをするだけなら以下の測色器などが使えます。
- Calibrite ColorChecker Display Pro
- Calibrite ColorChecker Display Plus
- Calibrite ColorChecker Studio
- X-Rite i1 Display Pro
- X-Rite i1Studio
- i1 Display 3
- EX4
- EX3
- Datacolor SpyderX
- X-Rite i1Pro3
- X-Rite i1Pro2
など。
Calibrite-ColorChecker-Display-Plus Amazon
スマホなどのモバイル機器のICCプロファイルをつくる機能も使いたい場合
「ColorNavigator7」にはタブレット/表示装置の測定とICCプロファイル作成などを行なう機能があります。この機能でモバイル機器のICCプロファイルをつくれます。
この機能を使うためには、対応している分光測色計を使用する必要があります。
この機能を使うための測色器は「ColorNavigator7」の説明書に載っています。
モニターの機種と測定器と利用できる機能の組み合わせは多少複雑なので、自分が使いたい機能を使うにはどの測定器必要なのか、店の人に聞いた方が良いでしょう。
- X-Rite i1 Pro 3
- Calibrite ColorChecker Studio
など。
無線LANを使う場合は念のため子どものいない場所で作業しましょう
携帯電話とマイクロ波を照射する機器の使用は、人体への危険性が指摘されています。
特に子どもは受ける影響がより大きいことが指摘されています。
欧州評議会議員会議では2011年に、学校の敷地内での携帯電話の使用の規制や有線インターネット接続を優先することなどを含む決議が採択されたそうです。
フランスでは、保育園などにおける無線機器の使用禁止、小学校においてデジタル教育以外では無線LANの使用不可などを定める法律が制定されているとのことです。
- Powerwatch News – 05/02/2015 – Wifi banned from nurseries in France
- 【フランス】[立法情報]電磁波ばく露の抑制に関する法律の制定 – 国立国会図書館
- フランス、携帯電話等の電磁波への曝露抑制や情報透明性等に関する法案を推進|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
そういった諸外国の動きから考えても、無線LANを使用せざるをえない作業は念のため子どもの生活エリア以外で行った方が良いでしょう。
参考記事
参考記事
その他の主なスペック
液晶パネルの種類 IPS
フォトレタッチ作業に十分です。
IPSパネルは、液晶セルの液晶分子の配列方法で最も一般的なTNのパネルの視野角が狭いという欠点を解消した方式です。
現在カラーマネジメントディスプレイとして販売されているディスプレイの多くがIPSパネルを使っているようです。
サイズ 24.1型
24.1型であればフォトレタッチ作業に十分です。
24.1型はA4見開きを実寸で表示してさらに横にツールパレットを表示できるサイズなので、フォトレタッチ作業をするにもレイアウトものを作る作業にも便利です。
画素密度 94ppi
通常のフォトレタッチ作業には十分です。
表示色
表示色の仕様は「約10.7億色: 10-bit対応 (約278兆色中 / 16-bit LUT)」と書かれています。
モニター内部の信号処理の仕様は(約278兆色中/16bit-LUT)とあり、実際に表示する色数より多い情報を使って計算した後に表示を行っているので色再現・階調表現など写真の作業に十分で問題ありません。
一般的な8bit表示で使う場合、表示色は約1677万色ですが、おそらく以前の機種のCS2420-Z等と同じく内部での信号処理は(約278兆色中 / 16-bit LUT)で行われ、質の高い表示が行われるものと思われます。
このような表示方法で8bit表示が行えれば、一般的なフォトレタッチ作業には十分です。
※例えば以前の機種であるCS2420-Zの仕様書には、表示色について「DisplayPort, HDMI: 約10.7億色: 10-bit対応 (約278兆色中 / 16-bit LUT), DVI: 約1677万色: 8-bit対応 (約278兆色中 / 16-bit LUT) 」と書かれており、8bit表示のときの色数についても書かれていました。
10bit表示にも対応しています。10bit表示を行うには条件を満たすハードウェアとソフトウェアが必要です。条件はCS2400Sの公式ページに書いてあります。
少しややこしいので、どうしても10bit表示でモニターを使いたい場合は、10bit表示を行うために何が必要か店の人に聞いた方が良いでしょう。
視野角(水平/垂直、標準値) 178°/178°
液晶表示モードの種類はIPSであることで、視野角は広めの178°です。
フォトレタッチ作業に問題ありません。
輝度 410cd/m2
フォトレタッチ作業に十分です。
一般的なフォトレタッチ作業なら80〜120cd/m2くらいの範囲で作業することが多いです。
スマホなどの初期状態くらいの明るさを再現して作業する場合にも、160cd/m2前後にできれば十分なので、410cd/m2あれば問題ありません。
コントラスト比 1350:1
フォトレタッチ作業に十分です。
応答速度 19 ms(中間階調域)
写真などの静止画の作業をする分には何も問題ありません。
ゲーム用のディスプレイ
ゲーム用のディスプレイなどは応答速度が速い必要があるので3msや1msなどの機種もあります。
そういったディスプレイは、応答速度が速い代わりに液晶表示モードの種類がTNなどであるため視野角が狭目で、画質もカラーマネジメント対応ディスプレイに比べると低いです。
Quick Color Match対応
写真などをプリンターで印刷するとき、カラーマネジメントにそれほど慣れていなくても、ソフトがカラーマネジメント関連の設定をしてくれるソフト「Quick Color Match」が付属しています。
「Quick Color Match」に対応しているプリンター、対応している用紙を使うことで、「Quick Color Match」がカラーマネジメントの設定をしてくれるので、設定を間違わずにうまく出力しやすくなるというソフトです。
メーカーのページ
表示モード
User、AdobeRGB、sRGB、Calibration(CAL)、といったモードがあります。
sRGBモードがあるので、ウェブ用画像をsRGBにして確認したりできます。
スマホ等のデバイスのエミュレーションはできない
デバイスのエミュレーション機能は、スマホなど他の表示装置の表示特性をディスプレイで再現する機能です。
ColorNavigator7にはスマホ等のデバイスの表示をエミュレーションする機能がありますが、CS2400Sではこの機能が使えません。
ただし、i1 Pro3、ColorChecker Studioなど分光タイプの測色器があれば、スマホ等のデバイスのICCプロファイルを作ることだけはできます。
よって、ディスプレイ表示全体でスマホの表示の再現はできなくても、Photoshopのドキュメント上だけで再現したりするとはできます。
例えばスマホのICCプロファイルを作って、Adoeb® Photoshop®で画像データにICCプロファイルを指定することで、スマホの表示をPhotoshopドキュメント上だけで再現することはできます。
その他
各色覚の人にとっての見えにくさを確認したいとき
血液型と同じように、ものの見え方にもいくつかタイプがあり、グラフィックを作るときは各色覚の人にとって見えにくくないか確認する必要があります。
以前の機種CS2420-Zは各色覚の人にとっての見えにくさを確認できるソフト「UniColor Pro」に対応していました。
ところが、UniColor Proは更新が終了してしまいました。
メーカーのページ
カラーユニバーサルデザインの観点から見え方を確認したい場合は、Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorを使っているなら「色の校正」の機能で主な色覚の見え方を確認できます。
参考記事
キャリブレーション作業
以下の記事などでカラーマネジメントモニターのキャリブレーション作業の一例を紹介しています。
参考記事
以上、フォトレタッチ用途の側面から、CS2400Sの主なスペックについてみてみました。
CS2400S
キャリブレーションを行うのに必要な別売りの測色器の一例 EX4
CS2400Sと測色器EX4等のセット
参考記事