モニターのキャリブレーション作業で、モニターの表示特性を基準に合わせます。
ところが、2台の異なる種類のモニターをキャリブレーションすると、単純に表示特性が同じになるわけではありません。
ここでは、モニターのキャリブレーションをすると異なるモニター同士で同じ表示をできるものの、表示特性が同じになるわけではない理由をみてみます。
モニターのキャリブレーション作業で行う内容
モニターのキャリブレーションを行うときに、一般的には以下のような作業を行います。
白色点の色を決めて、調整する
白色点の色をどういう色にするか、自分で決めます。色温度か色度xyの数値か、D50、D65などで決めます。
白色点が自分で決めた色になるよう、調整します。
入力と出力の関係を示す「ガンマ」を決めて、調整する
CRTディスプレイ、液晶ディスプレイなど、ディスプレイは仕組みによって色々な入力と出力の関係を示します。この関係はよくガンマで示します。
入力と出力の関係が色々だと扱いにくいので、たいていほとんどのディスプレイはCRTディスプレイのガンマと似た入力・出力の関係を示すように作ってあります。
CRTディスプレイの入力と出力の関係は、ガンマ2.2くらいです。
そのため、液晶ディスプレイのガンマもたいていは2.2と決めて、ガンマ2.2になるように調整します。
表示色の特性を示すディスプレイプロファイルを作る
白色点の色、ガンマの調整が済んだら、このディスプレイではRGBの情報がどのような色で表示されるのかを調べ、その特性を示したディスプレイプロファイルを作ります。
このディスプレイプロファイルがあることで、カラーマネジメント対応ソフトなどで表示したデータが正確な色で表示できます。
2種類のディスプレイをキャリブレーションしても、表示特性が同じになったわけではない
カラーマネジメント対応ソフトで表示すれば、キャリブレーションされた2種類のモニターで同じ色になる
キャリブレーションされた2種類のディスプレイそれぞれで、カラーマネジメント対応ソフトで同じデータを表示させてみます。
そうすると、キャリブレーション作業で作成したディスプレイプロファイルを利用して、同じ色に表示されます。
よって、フォトレタッチ作業など、カラーマネジメントを利用した一般的な作業をする分には、単純にキャリブレーション作業をすれば問題ありません。
カラーマネジメント対応でないソフトで表示すると、キャリブレーションされた2種類のモニターでも違う色になる
ディスプレイのキャリブレーション作業をしたとき、色を補正するためのディスプレイプロファイルが作られます。
しかし、ディスプレイそのものの表示色が変わるわけではありません。
例えば、sRGBくらいの色域を表示可能なディスプレイと、AdobeRGBくらいの色域を表示可能なディスプレイがあるとします。この2つのディスプレイをキャリブレーションした後、単純にRGB(0,255,0)という色を表示させたら、違う色に表示されます。
また、異なる種類の2つのディスプレイで、カラーマネジメント非対応のウェブブラウザでウェブサイトを表示させると異なる色に表示される可能性があります。
表示するソフトに関わらず、2種類のディスプレイの表示特性を同じにする方法
方法1 2つのディスプレイを両方ともsRGB特性で表示する
2つのディスプレイを両方ともsRGB特性に近く表示すれば、表示される色はほぼ似た状態になります。
キャリブレーション目標にカラープロファイルを指定できる場合
カラーマネジメントモニターなどでは、キャリブレーションの目標としてカラープロファイルを指定できるものがあります。
そういう場合は、sRGBを目標に設定してキャリブレーションすれば、sRGBに近い表示特性に調整できます。
AdobeRGB色域など広色域のキャリブレーションモニターを使っている場合
AdobeRGBの色域まで表示可能など、広い色域のキャリブレーションモニターを使っている場合、キャリブレーション時にモニターの色域を制限できる場合が多いと思います。
キャリブレーションするときに、sRGBをキャリブレーション目標とし、色域を制限する設定でsRGBプロファイルを指定することで、sRGBに近い表示特性にできます。
「sRGBモード」のような表示モードがあればそれを使う
「sRGBモード」のような、sRGBの表示特性で表示するための表示モードがあるディスプレイもあります。
その場合は「sRGBモード」を選べば、sRGBの表示特性で表示できます。
なお、EIZO®のキャリブレーションモニターにはsRGBモードという表示モードがあり、このsRGBモード選択時の表示を維持するためのキャリブレーション作業もできるようになっています。
方法2 キャリブレーションモニターのエミュレーション機能を使う
キャリブレーションモニターには、他のモニター等の表示特性を再現するエミュレーション機能があるものがあります。
エミュレーション機能を使えば2台のモニターの表示特性を同じにできます。
2種類のディスプレイのうち一方をキャリブレーションします。
次にもう一方のエミュレーション機能付のキャリブレーションモニターで、先ほどキャリブレーションしたディスプレイの表示特性をエミュレーションします。
これで2つのディスプレイはほぼ近い表示特性になります。
以上、モニターのキャリブレーションをすると、異なるモニター同士で同じ表示をできるものの、表示特性が同じになるわけではないことをご説明しました。
参考記事
「sRGBモード」があるディスプレイの例
モニターは中古市場にも多数あるので、まずは良い中古品を探すと良いでしょう。新品を購入するよりも環境負荷を低く抑えられます。
ハードオフ
楽天市場にも中古モニターは多数あります。
販売終了
プロファイルをエミュレーションする機能のあるディスプレイの例