モニターキャリブレーションのおおまかな理屈の雰囲気と、ハードウェア・キャリブレーションが可能なカラーマネジメントモニターの選び方の一例を紹介します。
※モニターの詳しい理屈は専門書に少しありますが、難しいです。より詳しくはディスプレイを作っている業界の人などにも聞かなければ分かりません。
本の一例
- 画像電子学会「カラーマネジメント技術: 拡張色空間とカラーアピアランス」東京電機大学出版局
- 画像電子学会「カラー画像処理とデバイス: ディジタル・データ循環の実現」東京電機大学出版局
- 山崎 照彦、川上 英昭、堀 浩雄 監修「カラーTFT液晶ディスプレイ」共立出版
- 大田 登「色彩工学」東京電機大学出版局
- 機器などを買うときの参考情報
- 予備知識 データの色について
- モニターのキャリブレーションのおおまかな理屈
- モニターキャリブレーション作業のおおまかな流れ
- ソフトウェア・キャリブレーションとハードウェア・キャリブレーション
- カラーマネジメントモニターの選び方の例
- カラーマネジメントモニターの具体例
- ディスプレイの廃棄方法
機器などを買うときの参考情報
電子機器の製造には深刻な国際問題も関係しています。
機器を使用する私たちユーザーもそれらの国際問題の当事者の一人です。
物を買う場合は社会的責任を果たしているメーカーや店の製品を選んで、やりがいのある仕事や創作活動をしましょう。
武装勢力や児童労働と関わりのある原料
報道によれば、電子機器などの製造に必要な鉱物には武装勢力の資金源になっている鉱山で生産されたり児童労働につながっているものがあります。
紛争や児童労働などに関わりのない鉱物を使用しているかどうか、製造メーカーがきちんと管理された道筋で原料を調達しているかどうかなどを確認してみましょう。
「メーカー名 + 紛争鉱物」などで検索すると、メーカーの公式サイト内の原料調達に関する取り組みや調査結果の報告のページなどが見つかります。
詳しく取り組みや結果を報告しているメーカーもあれば、報告などはほとんど公開していないメーカーもあります。
参考



参考書籍
以下の本で先進国から他の貧困国へ環境汚染その他の被害が押し付けられ外部化されていることなどが説明されていました。
使用後の壊れた製品の回収
壊れたパソコンのモニターなどは法律に従って再資源化します。
パソコンやモニターの場合なら「メーカー名 + PCリサイクル」などで検索すると各メーカーの回収・再資源化の申込や回収率の報告書などのページが見つかります。
分かりやすくていねいに説明しているメーカーもあれば、そうでもないメーカーもあります。
予備知識 データの色について
RGBのデータは表示するモニターによってまちまちに表示され、CMYKのデータを印刷すると1年前と今年の印刷結果で色が少し違っていたりします。
そのためRGBやCMYKのデータの色は表示や出力をしてみなければ分からないように感じてしまいますが、実際はデータ自体で正確な色を表現できます。
決まった色を持っていないデータ
RGBやCMYKの数値だけを示された場合、RGBはレッドとグリーンとブルーで、CMYKはシアンとマゼンタとイエローと黒だと大雑把には決まっているので、だいたいどのような色か大雑把には決まりますが、正確には決まっていません。
あるRGB値やCMYK値をどのような色で表すかは表す人の自由で、色は決まっていません。
そのため同じ番組を映してもテレビによって色が多少違ったり、同じチラシを印刷しても印刷所によって少し色が違ったりします。
例えば、カラープロファイルが指定されていないRGB(20,200,50)というただのRGB値を様々なモニターで表示した時、ただのRGB値をどのような色で表すかは表す人やモニターの自由なので表示される色はまちまちになります。

カラープロファイルが指定されていないRGB値はどのようなものか
カラープロファイルが指定されていないRGB画像を様々なモニターで表示した時、ただのRGB値をどのような色で表すかは表す人やモニターの自由なので表示される画像の色はまちまちになります。

カラープロファイルが指定されていないRGB画像とはどのようなものか
決まった色を持っているデータ
【RGB値】+【RGBカラープロファイル】、【CMYK値】+【CMYKカラープロファイル】、のように、RGB値・CMYK値などとカラープロファイルが組み合わされると、色は確定します。
カラープロファイルが埋め込まれた画像データはRGB値やCMYK値とカラープロファイルが組み合わされた状態になっており、色が確定しています。
例えば、カラープロファイルが指定されたRGB(20,200,50)というRGB値を様々なモニターで表示すると、RGB値をどのような色で表すかがカラープロファイルで指示されているのでどのモニターでも同じ色で表示されます。(※ただし各モニターが正しくキャリブレーションをされている必要はあります。)

カラープロファイルが指定されているRGB値とはどのようなものか
カラープロファイルが指定された画像データを様々なモニターで表示すると、RGB値やCMYK値をどのような色で表すかがカラープロファイルで指示されているのでどのモニターでも同じ色で表示されます。(※ただし各モニターが正しくキャリブレーションをされている必要はあります。)

カラープロファイルが指定されているRGB画像とはどのようなものか
同じ色で表示されないモニターがあった場合
もしカラープロファイルが埋め込まれた画像データを複数のモニターで表示したときに表示がまちまちになったとしたら、そのモニターの中にキャリブレーションされていないものが混ざっている可能性があります。
料理はかりに小麦粉を100g載せているのに100gと表示されない料理はかりが混ざっているようなものです。
ディスプレイが正確な表示をするという意味について
ディスプレイが正確な表示をするというのは、データの色をデータの色の通りに表示するということです。
正確にキャリブレーションされていないディスプレイの場合、データの色とは違う色で表示してしまいます。

キャリブレーションされているということの意味
カラーマネジメントシステムは「データの色」を次の機器に渡していく仕組み
カラーマネジメントシステムは、このようにして確定させたデータの色を変えないように、プリンターやディスプレイなどの機器から次の機器に色の情報を渡していくための仕組みです。
データの色は出力してみないと分からない、というのはICCプロファイルを使ったカラーマネジメントシステムが普及する以前の話です。
モニターのキャリブレーションのおおまかな理屈
以下はモニターのキャリブレーションのおおまかな理屈の雰囲気です。
何がモニターの表示の色をコントロールしているか
色の信号を何もコントロールせずにモニターで表示させてみる
パソコンから出てきた色の信号を、何もせずにモニターに直接送ってみます。
すると、モニターは一つ一つ特性が違うので、モニターによってまちまちな色で表示されます。
コントラスト強めで鮮やかに表示するモニターもあれば、くすんだ色で表示されるモニターもあるかもしれません。

色の信号をそのまま流すと、モニターによって少し異なる表示結果になる。
オーディオ機器に例えると
オーディオ機器に例えてみます。
ヘッドホンで音楽を聴くとします。ヘッドホンによって特性が違うので、同じ音の信号を送ってもヘッドホンごとに少し異なる音が鳴ります。

同じ音の信号でも、音を鳴らす機器によって少し異なる音になる。
色の信号を変換してからモニターに送ってみる
色の信号をそのままモニターに送るとモニターごとにまちまちな色の表示になってしまいます。
そこで、パソコンから送る色の信号を、表示するディスプレイ専用に作ったカラープロファイルで変換してから送ってみます。
モニターが正しい色を表示するように変換した色の信号をモニターに送った結果、元のデータの色を正しい色で表示することができます。

色の信号をカラープロファイルで変換してからディスプレイに送り、元のデータと同じ色を表示させる。
カラープロファイルだけでコントールするのは大変なので、モニター本体の調整機能も使う
パソコンから出た映像の信号をカラープロファイルによる変換だけで正確な色にするのは結構大変で、無理がかかります。
そこで、ディスプレイ本体の調整機能も合わせて使います。
ディスプレイ本体の色合いの調整機能は初期値にしたり、白色点の色温度を調整したり、輝度を調整したりします。
そのようにディスプレイ本体の調整機能で調整した上で、さらにディスプレイ用のカラープロファイルを使って正確な表示をさせます。
ディスプレイの表示をコントロールしているのはディスプレイ本体とディスプレイプロファイル
このように、モニターを正確な色で表示させているのはモニター本体の調整機能とそのディスプレイ専用に作ったカラープロファイルであるディスプレイプロファイルです。
モニターのキャリブレーションを行う場合、モニター本体を調整し、ディスプレイプロファイルを作ります。
パソコンのOSのディスプレイ関連の設定項目にディスプレイプロファイルの設定欄があるので、作ったディスプレイプロファイルをそこで選択します。
ディスプレイ本体の調整
ディスプレイ本体の機能で、モニターが表示する真っ白な部分の色合いや、信号の入力と出力の関係を示すガンマ特性や、輝度などを調整します。
画質の高いカラーマネジメントモニターなら最終的に表示する色数より多い色数で計算をしたりしています。
詳しい仕組みは難しいです。
ディスプレイプロファイルの作り方の雰囲気
1.測色作業
測色作業は、パソコンと測色器とカラープロファイル作成ソフトで行います。

測色作業
測色作業は、おおまかには以下のような流れです。
- まずパソコンからディスプレイにRGBの信号を送ります。
- ディスプレイで、送られてきたRGBの信号の内容を表示させておきます。
- パソコンにつないだ測色器でディスプレイが表示している色を計ります。
- 測色器で測った色の数値がパソコンに送られてきます。
この作業の結果、パソコンから送ったRGBの信号の数値と、それが実際にディスプレイで表示された色の測定結果の対応が一組判明します。
同じことをたくさんの色の信号について調べます。
2.カラープロファイル作成
上記の作業の結果、パソコンから送る色の信号の数値と実際にディスプレイで表示される色の測定結果の関係の対応表ができます。
大雑把に言うとこの対応表がディスプレイの表示の特性を示したカラープロファイルであるディスプレイプロファイルです。

ディスプレイプロファイルの中身のおおまかな雰囲気
モニター本体で白色点の色や輝度やガンマを調整し、モニターで表示するときにこのディスプレイプロファイルを使うと、例えばL*a*b*(30,40,20)の色のデータをL*a*b*(30,40,20)の色で表示でき、キャリブレーションされた状態になります。
キャリブレーション、キャラクタライゼーションなどの言葉について
細かく言うと、デバイスへの入力と、出力される色の対応を調べる作業はキャラクタライゼーション(Characterization)といい、キャリブレーション(Calibration)は環境が変化してもデバイスを標準的な状態に保つための作業のことをいうらしいです。
メーカーの人など詳しい人ならこういった用語も正確に使うかもしれませんが、ユーザーとしてはそこまで詳しく理解するのはややこしいので、機器が正しく色を扱える状態にするという感じの意味でキャリブレーションという言葉を使っていることが多いです。
モニターキャリブレーション作業のおおまかな流れ
モニターキャリブレーション作業はだいたい以下のような流れで行います。
輝度・白色点の色・ガンマなどを決める
モニターの輝度、白色点の色、ガンマなどをどのくらいにするか目標値を自分で決めます。
例えば、輝度は100cd/m2、白色点の色は色温度で5000K、ガンマは2.2、などと決めます。
輝度・白色点の色・ガンマを調整する
測色器をモニターに設置してキャリブレーション作業を開始すると、モニターキャリブレーション用のソフトが輝度、白色点の色、ガンマの調整を進めます。
カラーマネジメントモニターならたいていは全て自動で進みます。
カラーマネジメントモニターでない普通のモニターをモニターキャリブレーションツールでキャリブレーションする場合は、途中で手動でモニターの調整ボタンなどを操作する場合もあります。
様々なRGB値を表示して特性を調べる
様々なRGB値をモニターに表示し、結果を測定して特性を調べます。
ディスプレイプロファイルを作成する
調整や測定が終わったら、その結果をもとにディスプレイプロファイルを作成して保存し、OSのディスプレイプロファイル設定欄で今回作ったプロファイルを指定します。
ソフトウェア・キャリブレーションとハードウェア・キャリブレーション
ソフトウェア・キャリブレーションの雰囲気
カラーマネジメントモニターではない普通のディスプレイは、多少の輝度・コントラスト、色合いの調整はできても、ディスプレイ本体の内部で表示特性を高い精度で調整するようなことはできません。
そこで、パソコンから送る映像の信号自体を補正して白色点の色・輝度・ガンマなどの調整を行う必要があります。
大雑把にはこのような方法がソフトウェア・キャリブレーションです。
普通のディスプレイでCalibrite「Display Pro HL」やdatacolor「Spyder Pro」などのモニターキャリブレーションツールを使用してキャリブレーションをした場合、ソフトウェア・キャリブレーションが行われます。
映像の信号自体に処理を加えた結果、加える前より情報量が減るので理屈としては少し映像は劣化します。
ハードウェア・キャリブレーションの雰囲気
EIZO®のカラーマネジメントモニターなどは、ディスプレイ本体の内部で表示特性を高い精度で調整できるようになっています。
そのため、パソコンから送られてくる映像の信号には手を加えず、ディスプレイ本体で白色点の色・輝度・ガンマの調整などを行います。
大雑把にはこのような方法がハードウェア・キャリブレーションです。
ハードウェアで直接調整するので精度の高い調整ができ、映像の信号自体には手を加えないため情報量を減らすことがなく映像が劣化しません。
カラーマネジメントモニターと普通のモニターの大きな違いはハードウェア・キャリブレーションができるかできないかという点です。
なお、ここで述べたソフトウェア・キャリブレーションとハードウェア・キャリブレーションの違いはあくまでおおまかな雰囲気です。
カラーマネジメントモニターをキャリブレーションするときにモニター内部で行われていることやディスプレイプロファイルの作成の詳細はメーカーの人など詳しい人に聞かなければ分かりません。
カラーマネジメントモニターの選び方の例
キャリブレーション用ソフトが付属しているか別売りか確認する
カラーマネジメントモニターにはたいていキャリブレーションに必要な専用キャリブレーションソフトが付属していますが、専用キャリブレーションソフトが別売になっている製品もあります。
EIZOのカラーマネジメントモニターなら専用キャリブレーションソフトは付属しています。
カラーマネジメントモニターは専用キャリブレーションソフトを使ってキャリブレーションを行うことでモニター内部を調整してハードウェア・キャリブレーションができます。
もしカラーマネジメントモニター付属の専用キャリブレーションソフトを使わず、別のキャリブレーションソフトでキャリブレーションをした場合、ソフトウェア・キャリブレーションが行われてしまいます。
よって、専用キャリブレーションソフトを使わないとカラーマネジメントモニターを使う意味があまりなくなってしまいます。
測色器が付属しているか、オプションで用意されているか、内蔵か、確認や検討をする
キャリブレーション作業に必要な測色器が付属または内蔵されているカラーマネジメントモニターもあります。
外付け測色器がオプションとして別売りになっているカラーマネジメントモニターもあります。
測色器内蔵のタイプなら、内蔵測色器を使うだけなので簡単です。
外付け測色器がオプションで用意されている場合もオプション品を購入して使えば良いので簡単です。
本体と外付け測色器のセットを購入するか、測色器内蔵タイプのモニターを購入するか、などを検討します。
事務所に測色器がすでにある場合は、内蔵測色器やオプションの外付け測色器は必要ないかもしれません。
カラーマネジメントモニターで使用できる測色器は、内蔵測色器やオプションで用意されている外付け測色器に限りません。多くの場合、それ以外にも様々な測色器に対応しています。
使用可能な測色器は、ディスプレイ専用のキャリブレーションソフトの仕様の対応測色器の欄などに載っています。
参考リンク
EIZOのカラーマネジメントモニターなら、専用キャリブレーションソフトColorNavigator 7の仕様に対応する測色器、キャリブレーションセンサーの一覧が載っています。
色域
モニターの色域はモニターが表示できる色の範囲です。
カラーマネジメントモニターの主な機種では、sRGBをカバーしているもの、AdobeRGBをカバーしているものなどがあります。
動画を扱う作業に向いているモニターなら仕様欄に映像関連業界の色域の規格のカバー率も載っているかもしれません。
sRGBをカバーしているくらいの色域のモニターにするか、AdobeRGBをカバーしているモニターが必要か、などを検討します。
sRGBくらいの色域のモニターでもAdobeRGBのデータを扱える
sRGBくらいの色域のモニターでもAdobeRGBのデータを正確に扱えます。
モニターの色域で表示できない色は表示できる範囲に収まるよう色域圧縮(gamut mapping)という処理が行われ、表示されます。
2000年代はすでにICCプロファイルを使用したカラーマネジメントシステムがかなり普及してきて、印刷会社等ではAdobeRGBのデータを扱っていましたが、まだAdobeRGBの色域をカバーしたディスプレイはほとんどありませんでした。
ですがsRGBくらいの色域のカラーマネジメントモニターを使用して問題なくAdobeRGBのデータを正確に扱っていました。
AdobeRGBくらいの色域のモニターならsRGBくらいのモニターより表示できる範囲は広い
AdobeRGBくらいの色域のモニターの方がsRGBくらいのモニターよりも表示できる色の範囲は広いです。
AdobeRGBの風景写真のデータを色域がsRGBくらいのモニターで表示したときに、青空の色がsRGBの色域外の色になっていて実際の色より多少変わって表示されたとします。このデータを色域がAdobeRGBくらいのモニターで表示すると青空もデータが示す通りの色で表示できます。
一般的な写真を扱うならsRGBくらいの色域のモニターでたいてい支障はありませんが、sRGBの色域外の色を多く使ったデータを頻繁に扱うなどAdobeRGBの色をそのまま表示できた方が作業上便利ならAdobeRGBくらいの色域のモニターを選ぶのも良いでしょう。
色域以上に、正確にキャリブレーションできることが大事
カラーマネジメントモニターは正確にキャリブレーションができることが重要です。
色域がAdobeRGBくらいのカラーマネジメントモニターを正しくキャリブレーションせずに使ったり、カラーマネジメントモニターでない普通のモニターで色域がAdobeRGBくらいの機種をそのまま使ったりする場合、AdobeRGBのデータを正確に扱うことはできません。
色域がsRGBくらいのカラーマネジメントモニターを正しくキャリブレーションして使うとAdobeRGBのデータも正確に扱えます。
参考記事



表示モード
プリセットの表示モードがいくつか用意されている場合が多く、画面表示をsRGBにするモードなどがあります。
ウェブ用の画像を扱う場合にsRGBモードがあれば便利です。
世間ではsRGBに近い特性でウェブサイトを表示させることが多いので、sRGBモードを使ってその見え方を自分でも簡易的に確認できます。
EIZOのモニターならたいていsRGBモードがあります。
「sRGBモード」や「AdobeRGBモード」でなければsRGBやAdobeRGBのデータを扱えないわけではない
「sRGBモード」や「AdobeRGBモード」は便利だからあるだけで、それらのモードがなければsRGBやAdobeRGBのデータを扱えないということではありませんので、気にしすぎなくても大丈夫です。
カラーマネジメントモニターをきちんとキャリブレーションし、sRGBモードではなくそのディスプレイの特性のままの表示モードにし、Adobe® Photoshop®でsRGBの画像データを表示すると、正しくsRGB色空間で画像が表示されます。
カラーマネジメントモニターを使い、カラーマネジメント対応ソフトでsRGBのデータを扱うなら、表示モードがsRGBモードでもそれ以外でも問題なくsRGBのデータを扱えます。
同様に、カラーマネジメントモニターを使い、カラーマネジメント対応ソフトでAdobeRGBのデータを扱うなら、「AdobeRGBモード」のような表示モードでなくても問題なくAdobeRGBのデータを扱えます。
一方、カラーマネジメント対応ソフトではない普通のソフトでsRGBのデータを扱う場合は、そのディスプレイの特性のままの表示モードではsRGB色空間では表示されず、「sRGBモード」のような表示モードにしてモニター表示全体をsRGBの特性にすることでsRGB色空間でデータが表示されます。
なお、EIZOのカラーマネジメントモニターの例ではICCプロファイルを目標にしてキャリブレーションができるので、仮に「sRGBモード」「AdobeRGBモード」のような表示モードがなかったとしても自分でそれらの表示モードと同様の表示特性になるようキャリブレーションをすることもきます。
表示色
カラーマネジメントモニターはモニターの内部で信号を調整するための計算をし、その結果を画面に表示します。
高品質な表示をするためには実際の表示色より多い色の情報を使って計算をする必要があります。
品質の高いカラーマネジメントモニターなら、スペック表に単なる「1677万色」などの色数だけでなくパソコンから入力される信号を画面に表示するまでの処理に関わるスペックとして例えば「約1677万色:8bit対応(約278兆色中/16bit-LUT)」「約1677万色(約4兆3475億色中)」などの表示があります。
モニターの仕様の表や説明などを見て、実際の表示色より多い色の情報を使って内部の計算を行なっているかどうか確認します。
EIZOのカラーマネジメントモニターの場合なら、公式サイトでモニター内部の演算についての説明などがあります。
カラーマネジメントモニターにしては異常に安い製品があったとしたら、実際の表示色より多い色の情報を使って計算するような高度な方法をとっていない可能性もあります。
スマホ等のデバイスや3D-LUTファイルのエミュレーションができるかどうか
カラーマネジメントモニターには、スマホやタブレット等のデバイスの表示をパソコンの画面でエミュレートしたり、3D-LUTファイルを読み込んで映画フィルムの特性をエミュレートできる機能をもつものがあります。
そのような機能が必要かどうかを検討します。
EIZOの例では、キャリブレーションソフト「ColorNavigator7」にこのエミュレーションの機能があります。
この機能はモニター本体のモデルによって使えるものと使えないものがあります。
なお、EIZO ColorNavigator7でスマホやタブレットの表示を測定するには、オプションの外付け測色器や内蔵キャリブレーションセンターではなく、ColorNavigatorのモバイル機器の測定機能に対応している分光測色計が必要です。
各機能に対応した測色器はメーカーのウェブサイトで確認できます。
EIZOのモニターの場合、デバイスのエミュレーションができないモデルのモニターでもスマホ等のICCプロファイルは作成できます。
そして、そのICCプロファイルを目標にしてモニターキャリブレーションを行えば、スマホ等の表示状態をカラーマネジメントモニターで再現することはできます。
参考記事

映像の作業向きか、HDRの映像に対応しているか、など
映像関連の作業に使うなら、映像制作向きの機種かどうかを確認します。
HDRの映像に対応していたり、4Kの解像度の表示をできたり、「DCI-P3」「BT.2020」などの映像関連業界の色域の規格の表示モードが付いているカラーマネジメントモニターがあります。
液晶ディスプレイ共通の事項
応答特性
応答速度はフォトレタッチ作業など静止画を扱う作業をするなら気にする必要はほとんどありません。
動画を扱うなら数字が小さい方が良いでしょう。
画素密度
一般的なフォトレタッチ作業をする用途ならたいてい気にしなくても問題ない場合が多いです。
画面のサイズ
A3ノビを表示して、横にツールのパネルも表示できる27型サイズが選ばれることも多いです。
レイアウトものの作業ではなくフォトレタッチなどの作業だけなら24型くらいのサイズでも特に支障はありません。
自分の用途で必要な画面のサイズを検討します。
消費電力
電気を使うほど環境負荷は高くなるので消費電力は低いに越したことはないでしょう。
ディスプレイの回収
購入したディスプレイが壊れて廃棄するときは資源有効利用促進法に基づいてメーカーに回収を依頼します。
きちんとしたメーカーであればメーカーのウェブサイトからディスプレイ回収の申し込みができます。
ディスプレイの回収について公式サイトで分かりやすく説明していて、真面目に回収して再資源化しようという姿勢のメーカーを応援しましょう。
カラーマネジメントモニターの具体例
キャリブレーションの精度、色数など、EIZOのカラーマネジメントモニターなら品質は十分です。sRGBモードのような便利な表示モードも付いています。
以前はNECもカラーマネジメントディスプレイを製造していましたが製造が終了してしまったようです。
モニター本体+外付け測色器のセット sRGBカバー率100% 24型
EIZO ColorEdge CS2400R
EIZO ColorEdge CS2400R はsRGBカバー率100%、測色器は外付け、24.1型のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
CS2400Rと測色器のセット販売品があります。
測色器のEX5は分光測色計ではないため、スマホなどのICCプロファイルは作れません。
モニター本体+外付け測色器のセット AdobeRGBカバー率99% 24型
EIZO ColorEdge CS2400S
EIZO ColorEdge CS2400S はAdobeRGBカバー率99%、測色器は外付け、24.1型のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
CS2400Sと測色器のセット販売品があります。
測色器のEX5は分光測色計ではないため、スマホなどのICCプロファイルは作れません。
モニター本体+外付け測色器のセット AdobeRGBカバー率99% 27型
EIZO ColorEdge CS2731
EIZO ColorEdge CS2731 はAdobeRGBカバー率99%、測色器は外付け、27.0型のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
CS2731と測色器のセット販売品があります。
測色器のEX5は分光測色計ではないため、スマホなどのICCプロファイルは作れません。
EIZO ColorEdge CS2740(4K)
EIZO ColorEdge CS2740 はAdobeRGBカバー率99%、測色器は外付け、27.0型、解像度が4K UHD(3840×2160)のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
CS2740と測色器のセット販売品があります。
測色器のEX5は分光測色計ではないため、スマホなどのICCプロファイルは作れません。
EIZO ColorEdge CS2740-X(4K、HDR対応)
EIZO ColorEdge CS2740-X はAdobeRGBカバー率99%、測色器は外付け、27.0型、解像度が4K UHD(3840×2160)、HDR映像対応のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
CS2740-Xと測色器のセット販売品があります。
測色器のEX5は分光測色計ではないため、スマホなどのICCプロファイルは作れません。
モニター本体(測色器内蔵) AdobeRGBカバー率99% 24型
EIZO ColorEdge CG2420-Z
EIZO ColorEdge CG2420-Z はAdobeRGBカバー率99%、測色器内蔵、24.1型のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
測色器内蔵なのでモニター本体だけでキャリブレーションをできます。
内蔵測色器ではスマホなどのICCプロファイルは作れません。モバイル機器のICCプロファイル作成などをしたい場合は別途外付けの分光測色計が必要です。
EIZO ColorEdge CG2400S(HDR対応)
EIZO ColorEdge CG2400S はAdobeRGBカバー率99%、測色器内蔵、24.1型、HDR映像対応のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
測色器内蔵なのでモニター本体だけでキャリブレーションをできます。
内蔵測色器ではスマホなどのICCプロファイルは作れません。モバイル機器のICCプロファイル作成などをしたい場合は別途外付けの分光測色計が必要です。
モニター本体(測色器内蔵) AdobeRGBカバー率99% 27型
EIZO ColorEdge CG2700S(HDR対応)
EIZO ColorEdge CG2700S はAdobeRGBカバー率99%、測色器内蔵、27.0型、解像度がWQHD(2560×1440)、HDR映像対応のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
測色器内蔵なのでモニター本体だけでキャリブレーションをできます。
内蔵測色器ではスマホなどのICCプロファイルは作れません。モバイル機器のICCプロファイル作成などをしたい場合は別途外付けの分光測色計が必要です。
EIZO ColorEdge CG2700X(4K、HDR対応)
EIZO ColorEdge CG2700X はAdobeRGBカバー率99%、測色器内蔵、27.0型、解像度が4K UHD(3840×2160)、HDR映像対応のカラーマネジメントモニターです。専用キャリブレーションソフトは公式サイトからダウンロードできます。
測色器内蔵なのでモニター本体だけでキャリブレーションをできます。
内蔵測色器ではスマホなどのICCプロファイルは作れません。モバイル機器のICCプロファイル作成などをしたい場合は別途外付けの分光測色計が必要です。
ディスプレイの廃棄方法
カラーマネジメントモニターが壊れて使えなくなったときは、資源有効利用促進法などの法律に基づいて適正に処分をし、できるだけ環境負荷を抑えるようにしましょう。
参考記事


以上、モニターのキャリブレーションの大まかな理屈と、カラーマネジメントモニターの選び方の例でした。
参考記事


