以前コート紙の印刷用に作ったCMYK画像があり、元のRGBデータは手元にないというケースは結構あるでしょう。
同じ写真を今回は上質紙で使用しなければならなくなったとして、コート紙用に作ったCMYK画像をそのまま上質紙の印刷で使えば色は悪くなります。
ここではコート紙用のCMYK画像を上質紙の印刷で使い回すための処理の一例をご紹介します。
CMYK画像を作る場合は用紙の種類を含む印刷条件に合わせて変換する
オフセット印刷をすると場合、例えば以下のように色々なパターンがありえます。
- A印刷所でコート紙に枚葉オフセット印刷
- A印刷所で上質紙に枚葉オフセット印刷
- A印刷所でコート紙にオフセット輪転機で印刷
- B印刷所でコート紙に枚葉オフセット印刷
- B印刷所で上質紙に枚葉オフセット印刷
- B印刷所でコート紙にオフセット輪転機で印刷
それぞれに紙や印刷機が異なるので、同じデータを印刷しても異なる印刷結果になります。
また印刷所が異なれば決めている基準なども異なるかもしれないので、同じデータを印刷しても異なる印刷結果になります。
A印刷所もB印刷所もジャパンカラーを基準にしていて、同じデータを印刷すると結構近い印刷結果になる可能性もあります。
印刷結果は印刷条件次第で異なるので、元のデータの色をできるだけ再現して印刷できるように、予定している印刷条件に合わせてCMYKへのプロファイル変換をします。
単純にデータを使い回すと色や明るさは変わる
以前何らかの条件のオフセット印刷用にプロファイル変換したCMYK画像があり、それを今回別の印刷条件のオフセット印刷でそのまま使ってみます。
その結果、今回予定している印刷条件に合わせてプロファイル変換した画像ではないため、印刷すると前回の印刷結果とは異なる色になります。
ジャパンカラーでコート紙に印刷した画像を、そのままジャパンカラーの上質紙の印刷で使った場合、例えば以下のように色が変わってしまいます。(以下はあくまで雰囲気の一例です。)
以前コート紙にオフセット印刷したときの例
コート紙の印刷用のCMYK画像をそのまま上質紙の印刷で利用した例
コート紙の印刷用のCMYK画像をそのまま上質紙の印刷で使うというのは手順としては間違いであり、このくらい色が変わってしまうとクレームにもなるでしょう。
コート紙の印刷用のCMYK画像を上質紙の印刷で使うなら、1回プロファイル変換を行えば良い
以前コート紙の印刷で使ったCMYK画像があり、元のRGB画像が残っておらず、今回上質紙の印刷で画像を再利用しなければならないなら、1回プロファイル変換をするとある程度まともな品質で印刷できます。
Photoshopでプロファイル変換のアクションを作っておく
Adobe® Photoshop®で、今回予定している上質紙のオフセット印刷の条件を示したCMYKプロファイルにプロファイル変換する操作のアクションを作っておきます。
上質紙のオフセット印刷の条件を示したCMYKプロファイルは、自分の会社専用のものを作っているならそれを使い、自分の会社で何も作っていないならJapanColor2001Uncoatedを使ってみるなどします。
バッチ処理などで画像をプロファイル変換
Photoshopの「バッチ」を使って、以前使ったコート紙の印刷用のCMYK画像を上質紙の印刷の条件を示したCMYKプロファイルへ変換します。
CMYKからCMYKの変換でも、経験上それほど支障はない
CMYKからCMYKのプロファイル変換はあまりしたくないと思う人もいるでしょう。
私の経験上、1回CMYKからCMYKにプロファイル変換して特に品質が下がったことはありません。
特に、このまま放っておけばコート紙用のCMYK画像をそのまま上質紙で使ってかなり悪い仕上がりになってしまうような状況であれば、CMYKからCMYKに1回プロファイル変換をしてまともな印刷結果にした方がはるかに良いでしょう。
レイアウト担当の人に渡す
プロファイル変換し終わったらレイアウト担当の人に渡し、印刷に進みます。
注意点
画像は再利用してレイアウトデータ自体は新たに作る、というケースではそれほど複雑な注意点はないかもしれません。
一方、レイアウトデータも含めて以前のデータを使い、用紙だけ変えて印刷するというケースでは色々と注意が必要です。
背景の平網とCMYK値を合わせてある画像がないか注意する
画像データのCMYK値を背景の平網のCMYK値に合わせてあり、境目が出ないようにしてレイアウトしているようなデータもあるでしょう。
そのようなデータでは画像だけプロファイル変換をしてしまうと背景と画像の境目が分かるようになってしまいます。
そこで、そのような使い方をしている画像だけはプロファイル変換しないでおいたり、プロファイル変換した後に画像の端近辺のCMYK値だけはプロファイル変換前のCMYK値と同じ値に調整する、などの細かい判断、操作が必要になります。
切り抜き情報がなくならないよう注意
画像データにパスやレイヤーマスクで切り抜きをしてある場合もあるでしょう。
そのような画像はプロファイル変換する作業の過程で切り抜きの情報がなくなってしまったりしていないか注意が必要です。
ただの写真ではない特殊な画像の扱いに注意
例えば写真ではない特殊な画像でK版の数値を意図的に調整しているような画像があったとします。
このような画像を単純にプロファイル変換するとK版の数値が変わってしまうので、問題になります。
そこで、CMYK値を安易に変えるわけにはいかないような特殊な画像はプロファイル変換しないでおく、というような判断が必要になります。
その他色々注意が必要
以上のことは注意点の一例で、実際の作業ではさらに色々注意するべきことが出てくるかもしれません。
そのため、このページで紹介したような作業をするならある程度詳しい必要はあります。
上質紙で使ったCMYK画像をコート紙で再利用するような場合も同様
以上の説明とは逆に、以前上質紙で使ったCMYK画像があり、元のRGB画像はすでになく、コート紙で画像を再利用するような場合もたまにはあるでしょう。
そのような場合も同様の作業である程度まともな印刷結果にできます。
元のRGB画像があるならRGBから作る
このページの説明はあくまですでにCMYK画像しか手元に残っていない場合の対応方法の例です。
元のRGB画像が残っているなら、今回予定している印刷条件に合わせてRGB画像をCMYKにプロファイル変換します。
以上、コート紙用のCMYK画像を上質紙の印刷で使い回すための処理の一例をご紹介しました。
参考記事