モニターのキャリブレーションなどについて、おおまかな説明がネット上にたくさんあります。
一方、秩序立ててカラーマネジメントについて知りたい場合、ネット上の情報では足りません。
ここでは、カラーマネジメントシステムについて秩序立てて正確な知識を得る方法をご紹介します。
- カラーマネジメントシステムの仕組みは現場作業だけから学ぶのは困難
- カラーマネジメントについてのおおまかな説明は、ネット上に少しある
- ネットには秩序立てた正確な説明はあまりない
- カラーマネジメントについて基礎からの正確な知識を得るには、本を使う
- 谷口泉(著)『カメラマンのためのカラーマネージメント術』翔泳社[2011]
- 上原ゼンジ(著)『すぐにわかる!使える!!カラーマネージメントの本―仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル』毎日コミュニケーションズ[2006]
- 上原ゼンジ 著、庄司正幸 監修『改訂新版 写真の色補正・加工に強くなる ~Photoshopレタッチ&カラーマネージメント101の知識と技』技術評論社[2016]
- 篠田 博之,藤枝 一郎(共著)『色彩工学入門-定量的な色の理解と活用』森北出版[2007]
- 小野文孝,河村尚登(監修),画像電子学会(編集)『カラーマネジメント技術―拡張色空間とカラーアピアランス』東京電機大学出版局[2008]
- カラーマネジメントに関するその他の本
- カラーマネジメントシステムを利用する側なら、利用する側にとって必要な知識を身につける
- 仕事や創作活動など社会生活全般の基礎を学ぶ本
- カラーマネジメントの基礎を学ぶ際に必要になる、数学を学ぶ場合
カラーマネジメントシステムの仕組みは現場作業だけから学ぶのは困難
例えば印刷会社の現場で働いていれば、前工程であれ後工程であれ、色の問題を扱う必要に迫られて、カラーマネジメントの正確な知識がないとしても何らかの対応をしてその場を乗り切ったりするでしょう。
また、プリプレスの現場でICCプロファイルを指定したりしなかったり、プロファイル変換したりしなかったりで何とかその場を乗り切ったりすることもあるでしょう。
そのように、現場でICCプロファイルを扱う機会などは頻繁にありますが、現場でこのような作業をいくらしてもカラーマネジメントシステムに関する体系的な理解は得られません。
ICCプロファイルを使用したカラーマネジメントシステムの仕組みを知るには、仕組みを説明した本などを読んで学ぶしかありません。
仕組みを知った上で現場作業をしていれば知識は深まる
ただ現場作業をしているだけではカラーマネジメントシステムの仕組みに関する体系的な知識は身に付きませんが、正確で体系的な知識を身につけた上で日々の現場作業を行っていると、ただ本で読んだだけより知識は深まります。
カラーマネジメントについてのおおまかな説明は、ネット上に少しある
カラーマネジメントについて、おおまかな説明はネット上に少しあります。
カラーマネジメントモニターなど、カラーマネジメント関連のツールのメーカーのウェブサイトに行けば、カラーマネジメントの基本の説明が載っていたりします。
カラーマネジメントの話題を扱ったブログ記事も結構あります。
そういったところでおおまかな知識を得て、カラーマネジメント関連ツールを購入して機器のキャリブレーションなどを行い、カラーマネジメントの体制を整えることもできます。
ネットには秩序立てた正確な説明はあまりない
ネットには大まかな説明はあります。
しかしネットは本ではないので、理路整然と秩序立てて書いた説明はほとんどありません。
カラーマネジメントについて基礎からの正確な知識を得るには、本を使う
カラーマネジメントについて、あいまいでなく基礎からの正確な知識を得るには、本を読む必要があります。
以下に、本の一例をあげます。
谷口泉(著)『カメラマンのためのカラーマネージメント術』翔泳社[2011]
カラーマネジメントの初歩的な実務と、初歩の知識が説明されています。
きちんと学ぶにはより詳しい説明が書かれている本を読む必要がありますが、カラーマネジメントシステムを説明した本自体が少ないので、とりあえず手に入りやすい本としてこの本が便利です。
上原ゼンジ(著)『すぐにわかる!使える!!カラーマネージメントの本―仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル』毎日コミュニケーションズ[2006]
カラーマネジメントに関する実務と基礎知識が説明されています。
オフセット印刷と関わる部分もよく説明されています。
印刷やグラフィックデザイン関連の仕事をしていて、カラーマネジメントに関する実務と知識を身に付ける場合は必ず読みたい本です。
2006年の本ですが、ICCプロファイルを使用したカラーマネジメントシステムの基本的な仕組みは変わっていないので、ほとんど問題ありません。
上原ゼンジ 著、庄司正幸 監修『改訂新版 写真の色補正・加工に強くなる ~Photoshopレタッチ&カラーマネージメント101の知識と技』技術評論社[2016]
カラーマネジメントの理屈に則ったフォトレタッチについて、正確な理解を得られる本です。
篠田 博之,藤枝 一郎(共著)『色彩工学入門-定量的な色の理解と活用』森北出版[2007]
色というものを定量的に扱うための理屈が説明されている本です。
色彩工学の本は他にも色々あり、この本より詳しい本もたくさんありますが、初めて色の定量的扱いを学ぶ場合、この本の難易度がちょうど良いのではないかと思います。
カラーマネジメントの技術は色を定量的に扱う理屈を使って実現しています。
そのため、カラーマネジメントを正確に理解するためには色を定量的に扱う理屈を知る必要があります。
小野文孝,河村尚登(監修),画像電子学会(編集)『カラーマネジメント技術―拡張色空間とカラーアピアランス』東京電機大学出版局[2008]
カラーマネジメント技術の基本的な内容が説明されています。
色の定量的な扱いの理屈などを知ったのち、この本を読むと理解しやすいかもしれません。
カラーマネジメントに関するその他の本
色彩工学関連の本は、上記の『色彩工学入門-定量的な色の理解と活用』以外にもたくさんあります。
一方、カラーマネジメントの実務本は意外と少ないです。
上記の『すぐにわかる!使える!!カラーマネージメントの本―仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル』のように、実務に加えて理屈をある程度詳しく説明している本はほとんど見つかりません。
他の実務本はたいてい理屈の説明が少なく、カラーマネジメントについて正確な知識がほしい人にとっては説明が足りない場合が多いです。
カラーマネジメントシステムを利用する側なら、利用する側にとって必要な知識を身につける
カラーマネジメントモニターのメーカーやプリンターのメーカーや測定器のメーカーなどカラーマネジメント関連の機器を作っているメーカーの技術者の人や、大学に勤務していてそういった関連のことを扱っている人もいます。
そのような人たちならカラーマネジメントシステムについてとても詳しいでしょう。
一方、印刷業界や写真業界などの仕事でカラーマネジメントシステムを利用している立場の技能者の人なら、メーカーや大学の人と同じほど詳しい理屈の知識は必要ないでしょう。
カラーマネジメントシステムを利用している技能者の立場なら、カラーマネジメントシステムを使って画像などを入力したり表示したり出力したり保存したり誰かに渡したりするために十分な知識が必要です。
技能者にとっては理屈についてだけ詳しくても現場で使えなければ意味がありません。
例えばモニターについてだけめっぽう詳しくてそれ以外の知識は無いなら印刷や写真関連でカラーマネジメントシステムを活用できませんが、機器のメカニズムなどにやたらと詳しくならなくてもカラーマネジメントシステム全体の基本を正確に理解できていれば、現場の作業でカラーマネジメントシステムを正しく利用できます。自分自身の業務でもカラーマネジメントの知識を使い、また社内で色のトラブルが発生して原因を尋ねられれば作業を遡って原因を突き止めて改善したり、出力機器などの管理担当になればキャリブレーションをしたり出力プロファイルを作ったりデータの入口から出口までのプロファイル指定やプロファイル変換などの自動処理の設定を作ったりする作業をカラーマネジメントの知識を利用してこなせます。
仕事や創作活動など社会生活全般の基礎を学ぶ本
カラーマネジメント技術を利用して仕事をしたり、写真やイラスト制作などの文化活動をしたり、その他社会生活を送っていくために必要な基礎を学ぶために役立つ本です。
日高 普『経済学 改訂版』岩波全書
働くことの意味、自分の収入はどこから生まれているか、累進課税にする理由、日々働いて人間の暮らしに必要なモノやサービスを同じくらい作り出していてもある人は収入が多くなりある人は収入が少なくなっていること、などが分かり、その他経済学など社会科学全般の基礎知識、良い仕事や創作活動をするために必須の知識が身につきます。
「入門書であると同時に経済学専攻の学生にも役立たせようとする本書は,優れた教科書として版を重ねた.改版に際し,21‐25章が書き改められ,十数年間の変貌著しい内外の経済動向にも,充分目配りされている.」(出版社による説明)
カラーマネジメントの基礎を学ぶ際に必要になる、数学を学ぶ場合
工学にせよ、理学にせよ、社会科学の分野にせよ、理屈を説明したり機器を改良したりするためなどに数学を利用します。
そのため、カラーマネジメント技術も数学の知識がないと途中までしか理解できません。
学校の授業で脱落し、または脱落させられ数学が全く分からない人も多い
当ブログ運営者の私は昔函館の公立高校に通っていましたが、学校の授業は有名国公立大に入れるくらいの生徒を対象にして行われており、私のような学力の低い者はゴミとみなされ学校からほぼ人間扱いすらされない状況でした。
おそらく似たような状況に陥った人は他にも結構いるでしょう。
授業についていけない生徒が大量に生まれ、その生徒らは高校時代を通じて何も学べずに終わってしまうことになります。
社会人なら、そこまで脱落したなら教師が行う授業は完全に無視して自分で勝手に教科書を読み進めて学問をする、ということも可能ですが、高校生ではそこまでの判断はできずに何とか授業に追いつこうとしてしまい、授業にも追いつけないが独学もしていない、という状況になりがちです。
当然ながら、工学、理学、社会科学の諸分野、その他諸々の分野で多用される数学もほとんど習得できずに終わります。
その先の大学に進んだり会社に就職するなどして、必要な勉強をするとしても、高校の数学が分からなければ大学の授業や仕事関連の本に頻繁に出てくる微分方程式や行列なども全く意味がわからず、すべての分野でなす術がなくなります。
現在の高校が同じ状況かどうかは高校で働いている人に聞かなければ分かりません。
会社員の人なら労働組合の行事の際などに高校の先生に聞いてみるのも良い
会社員や公務員など雇用されて働いている労働者の人なら、労働組合に加入している人も多いでしょう。労働組合に入っていれば、他の組合の人と一緒に開催する行事や諸会議で高校の教職員組合の人と顔を合わせる機会もあるでしょう。
そういったときに、高校の教職員組合の人と交流して現在の高校では授業について行けず脱落する生徒が大量に生まれているのか、それとも以前よりは行き届いたマシな授業が行われているのか、などを聞いてみるのも良いでしょう。
参考リンク
本を買って独学する
学校教育に問題があるとしても、それは置いておいて、とりあえず私たち社会人は知的好奇心で勉強しているわけではなく仕事上の必要に迫られて勉強しているので、何とかして数学を学び直す必要があります。
本を買って学び直すことになるでしょう。
社会人が数学を学び直すための本
私が高校生の頃なら、書店には大学の先生方が書いた参考書が多くありました。
大学の先生方は研究と教育が仕事です。
社会人の私たちは仕事で必要な物事を知りたくて勉強しているので、研究や教育を職業としている大学の先生方が書いた参考書は社会人が学び直すためにも適しているでしょう。
ところが、昨今は書店で売られている参考書のほとんどが予備校や進学塾の講師が書いたものになってしまっています。
予備校や進学塾は研究や教育をするところではなく、高校や大学の入学試験に合格させるというサービス業であり、当然そのサービスを購入する人は物事を知ることが目的の人々ではなく入試で高得点をとって合格することが目的の人々です。
そのため仕事上の必要に迫られて物事を知りたい社会人の私たちが学ぶとき、予備校や進学塾の講師が書いた本は適しません。
私たち社会人は入学試験に合格することを目的としているわけではなく、仕事で必要な物事を知ることが目的だからです。
大学の先生方が書いた数学の参考書を根性で探す
社会人の私たちが書店で参考書を買うなら、大学の先生方が書いた参考書を根性で探してみましょう。
ただし、私が書店で探した限りでは、ほぼ見つかりませんでした。
現在の高校で使われている教科書を購入する
全国教科書供給協会のウェブサイトに行って、私たち一般の社会人は高校の教科書を購入できるのかどうか調べてみたところ、購入できるらしいです。
例えば株式会社北海道教科書供給所のウェブサイトには
「教科書は誰でも購入できます 小学校、中学校、高等学校で使用している教科書は、最寄りの教科書取扱書店でご購入いただけます。」
と書いてありました。
ですので、高校の授業で脱落して何も学べなかった悲しい過去を持つ私のような社会人の皆さんは、高校の数学の教科書を購入して学び直すのも良いでしょう。
学校で使用されている教科書なら、たいていは研究や教育を職業にしている人が責任を持って執筆し、基礎から秩序立てて書かれているので、私たち社会人が物事を知りたくて勉強し直すのにも最適です。
参考リンク
中学高校の教科書が読みにくければ大学の学部生向けの教科書も手頃
最近の中学高校の教科書はオールカラーのものも多いようで、色が着きすぎて読みにくいかもしれません。また中学や高校の子ども向けにやさしく書かれているので、社会人には逆に分かりにくいこともあるかもしれません。
大学の学部生向けの教科書としてある程度やさしく書かれている専門書なら、大学の子ども向けに書かれてはいますが社会人が読んでも結構分かりやすいです。
余力があれば他の分野の教科書も
高校の授業で脱落して何も学べなかった悲しい過去を持つ私のような社会人の人なら、数学に限らず全ての科目で脱落しているケースが多いでしょう。
そこで、数学だけでなく、他の教科の教科書も購入してみて、朝夕の通勤列車の中で読むのも良いでしょう。
小中高の教科書は基礎からきちんと秩序立てて説明されており、非常によくできています。
物事を知りたい社会人にとってはとても良い内容です。
教科書で足りない部分は一般の書籍で学ぶ
教科書検定制度があるため、社会科学分野の科目の教科書などでは本来載せるべき内容が削除されるようなこともあり、そういった問題がよく報道されています。
大人であれば、足りない部分は一般の書籍を読んで補強すると良いでしょう。
一般書店に売られている新書や大学の学部生向けの初歩的な専門書などを読めば、中学や高校の教科書で不足している部分も学べます。
十代の頃、教科書が分かりにくいと感じた理由を考えてみる
十代の頃の自分にとっては学校の教科書はとても分かりにくく、予備校の講師などが書いた参考書の方がまだマシだと感じていました。
中学高校の教科書は物事を知るための本であり、定期試験や入学試験で正答を書くことを目的にした本ではありません。
予備校化した中学高校で試験勉強と学問の違いが分からなくなり混乱させられていた当時の自分にとっては試験で正答を書くことが目的と化しており、物事の説明が書いてある学校の教科書よりも試験で正答を書くテクニックが書かれている予備校講師が書いた受験テクニック本の方が分かりやすいと思ったのでしょう。
当ブログ運営者の私が十代の頃は学問と受験勉強の区別が全くついておらず、また高校の教師らもそれらの区別がついておらず、私は進学校のやり方に振り回されて無駄にエネルギーを消耗していました。
大学の先生方から「中学や高校や大学は就職や進学のための予備校ではない。学問は学問をする事自体が目的だ」といったような話を聞くにつれ、また社会人になって仕事や労働運動の必要に迫られて色々勉強しなおした結果、自らが通っていた高校で行われていたものは単なる受験テクニックの訓練であり、学問とは似ても似つかないものだった、と分かりました。
以上、カラーマネジメント技術について秩序立てて正確な知識を得る方法をご紹介しました。
参考記事