AdobeRGBで撮影した写真はAdobeRGBの色域をカバーしたディスプレイでないと正しく表示できないという誤解がとても多いようです。
実際は、カメラ、モニター、プリンターなど色を扱うデバイスが表現可能な色域はたいていは異なっています。
そのためカラーマネジメントシステムには、より狭い色域のデバイスにも正常に色の情報を渡せる仕組みが含まれています。
ここでは、AdobeRGBで撮影した写真はsRGBの色域のモニターでも正常に表示可能であることをご説明します。
キャリブレーションが行えることと、表示可能な色域の広いことは、別
ディスプレイの、表示可能な色域が広いことと、正確にキャリブレーションを行えるかどうかは別な話です。
AdobeRGBの色域を表示可能なディスプレイで、正確なキャリブレーションができないディスプレイも、高い精度でキャリブレーションが行えるディスプレイもあります。
sRGBの色域まで表示可能なディスプレイで、正確なキャリブレーションが行えないディスプレイも、高い精度でキャリブレーションが行えるディスプレイもあります。
キャリブレーションを料理はかりに例えてみる
キャリブレーションが行えるということは、料理はかりや体重計で言えば、0kgのとき表示が0、10kgのものをのせたとき表示が10kgになるように調整できる、ということと似ています。
AdobeRGBの色域を表示可能なディスプレイは100kgまで計測可能なはかりで、sRGBの色域まで表示可能なディスプレイは50kgまで計測可能なはかりのようなものです。
計測できる範囲は違いますが、両方ともキャリブレーションが正確にとられていれば5kgのものは5kg、10kgのものは10kgと正確に計れます。
正確にキャリブレーションされていなければ、100kgまで計れるはかりも50kgまで計れるはかりも、どちらも正確な重さの表示はできません。
ディスプレイの表示可能な色域を超えるデータでも正常に表示できる
sRGBの色域の範囲を超える色を持ったデータをsRGBまでしか表示できないディスプレイで表示させると正しくない色で表示されるかというと、そういうことはありません。
sRGBまでしか表示できないなりに正確に表示されます。
色域変換(色域圧縮、ガモットマッピング)を行うことで正常に表示できる
カラーマネジメントの仕組みでは、色域の異なるデバイス間で色の情報を渡していきます。
色の情報を渡す相手の色域に収まりきらない色が存在する場合もよくあります。
そのような場合は、できるだけ見え方が変わらないようにしながら色域変換(色域圧縮、ガモットマッピング)という処理を行います。
これにより色域の広さの異なるデバイスどうしでも色の情報を渡すことができます。
AdobeRGBの色域の写真をsRGBしか表現できないディスプレイに表示する場合も、色域変換を行うことで正常に表示ができます。
カラーマネジメントシステムは色域変換という方法も含んだ技術です。
ディスプレイの表示可能な色域の違いを、オーディオ機器に例えてみる
再生可能な音域の広いオーディオ機器と、狭いオーディオ機器なら、表現できる音の範囲の広さは違いますが、どちらで音楽を鳴らしても、機械が正常なら正しく音楽が流れます。
元の音のデータには再生可能な音域の狭いオーディオ機器では表現できない程のとても広い範囲の音の情報が入っていたとしても、音域の狭いオーディオなりに正確に音楽が流れます。
ディスプレイの表示可能な色域の違いを、楽器に例えてみる
ピアノで7オクターブほど使用して弾く曲があるとします。
鍵盤が88ある普通のピアノなら問題なく弾けます。
同じ曲を鍵盤が49しかないキーボードで弾く場合、鍵盤が足りなくなります。
しかし、ピアノの上手な人なら鍵盤が足りない音は適切に別の音に置き換えて、鍵盤が少ないなりに一応同じ曲が弾けます。
それと全く同じではありませんが、似ていて、sRGBまでしか表示できないディスプレイでsRGBの色域を超える色域の情報を持った画像データを表示させても、sRGBのディスプレイなりに表示できるよう変換されて正しく表示されます。
よって、sRGBまでしか表示できないディスプレイを使用しても、キャリブレーションが正しくとれればsRGBより広い色域を持ったAdobeRGBの画像などもそれほど問題なく扱えます。
データやデバイスごとの色域の違いを意識する必要はある
ただし、とても彩度の高い色などは本来の彩度では表示されていないので、「彩度の高い色はsRGBで表現できる範囲に変換されている」と作業中頭に置いておく必要はあります。
以上、AdobeRGBで撮影した写真はsRGBの色域のモニターでも正常に表示可能であることをご説明しました。
参考記事