最近はスマホやタブレットなどのモバイル機器がかなり普及し、ウェブサイトの閲覧もモバイル機器で行うケースがかなり多くなりました。
そのため、画像データなどを扱うときにパソコン画面でモバイル機器の液晶画面表示を再現して作業したいケースは多いです。
ここでは、EIZO®のカラーマネジメントモニターとキャリブレーションソフトColorNavigator 7を使って、パソコン画面をスマホ等のモバイル機器のディスプレイ表示に合わせ、スマホ等の画面表示を再現する方法を紹介します。
デバイスエミュレーション機能が使える場合は使う
EIZOのカラーマネジメントモニターのうち上位機種はデバイスエミュレーション機能というものが使えます。
デバイスエミュレーション機能を使ってモバイル機器の表示などを再現できます。
しかし、デバイスエミュレーション機能が使えるのは一部の上位機種のみで、CSシリーズなど多くの機種はデバイスエミュレーション機能が使えません。
参考
ColorNavigator 6デバイスエミュレーション機能|eizocojp
デバイスエミュレーション機能が使えなければICCプロファイルを目標にキャリブレーションする
EIZO®のCSシリーズなどデバイスエミュレーション機能が使えないカラーマネジメントモニターの場合は、モバイル機器のICCプロファイルを目標にしてキャリブレーションを行うとある程度モバイル機器の表示に近い状態にできます。
モバイル機器のICCプロファイルを作る機能はCSシリーズでも使用できます。
このページではデバイスエミュレーション機能ではなく、モバイル機器のICCプロファイルを目標にしてモニターキャリブレーションをする方法を紹介します。
このページで行う、PC画面でスマホの表示を再現するまでのおおまかな流れ
このページでは、以下のような流れでPC画面でスマホの画面表示を再現してみます。
- カラーマネジメントモニターと付属ソフトの機能を使ってスマホの画面の表示特性を示したICCプロファイルを作る
- 完成したICCプロファイルをキャリブレーション目標にして、カラーマネジメントモニターのキャリブレーションを行う
必要な道具
このページで紹介する方法でスマホやタブレットなどのモバイル機器の表示色をPC画面で再現するためには、以下のような道具が必要です。
- モバイル機器のICCプロファイル作成が可能なカラーマネジメントモニターと付属ソフト
- 分光測色計
道具を買う場合の注意点
電子機器の製造には深刻な国際問題も関係しています。
当然ながら、機器を使用する私たちユーザーもそれら国際問題の当事者の一人です。
仕事や創作活動などを意義あるものにするため、物を買う場合は社会的責任を果たしているメーカーや店の製品を選びましょう。
武装勢力や児童労働と関わりのある原料を使っていないかどうか
報道によれば、電子機器などの製造に必要な鉱物は武装勢力の資金源になっている鉱山で生産されたり、児童労働につながっているものもあるということです。
参考
華井和代「紛争下の性暴力の構造と日本の取り組み」ーデニ・ムクウェゲ医師来日講演会:平和・正義の実現と女性の人権
デニ・ムクウェゲ「コンゴ東部における性暴力と紛争鉱物(日本語字幕)」ーデニ・ムクウェゲ医師講演会2016
【アムネスティ】スマートフォンに隠された真実:あなたのケータイ、「児童労働」につながっていませんか?(日本語字幕付※設定をONにしてください)|アムネスティ日本
参考リンク
参考書籍
「人新生の「資本論」」で先進国から他の貧困国へ環境汚染その他の被害が押し付けられ外部化されていることが説明されていました。
電子機器などを購入する場合、紛争や児童労働などに関わりのない鉱物を使用しているかどうかなど、製造メーカーがきちんと管理された道筋で原料を調達しているかどうかを確認すると良いでしょう。
ウェブサイト等で原料調達に関する取り組みについて記載し、調査結果などを公開しているメーカーもあります。
使用後の製品の回収について説明されているかどうか
物が壊れたら、パソコンやPCモニター等ならPCリサイクルなどに出す、その他の電子機器なら小型家電リサイクルなどに出す、というように法律に従って回収に出す必要があります。
メーカーによっては使用後の機器の回収方法を分かりやすく説明したり、分かりやすい回収申し込みフォームを用意したりしています。
一方、使用後の機器の回収について丁寧とは言えない説明しか載せていないメーカーもあります。
きちんと回収して持続可能な事業活動をしようとしているまじめなメーカーを選びましょう。
カラーマネジメントモニターと付属ソフト
EIZO®のカラーマネジメントモニターと付属ソフトColorNavigator 7でモバイル機器のICCプロファイル作成機能が使えます。
カラーマネジメントモニターの例
分光測色計について
モバイル機器のICCプロファイルを作成するために、ColorNavigator 7に対応している分光測色計が必要です。
測色器には、分光測色計でないものもあります。
例えば、®のカラーマネジメントモニターのオプションの外付けカラーセンサー「EX3」は三刺激値直読の方式の測色器で、分光測色計ではありません。
分光測色計としてはCalibriteのColorChecker Studioなどがあります。
ColorNavigator 7に対応した分光測色計はColorNavigator 7の公式ページに掲載されています。
ColorNavigator7のページ
ColorNavigator 7に対応した分光測色計の例
以下はColorNavigator 7のメーカーのページの対応測色器一覧表にあった測色器の一例です。
もし新たに購入するような場合は、ColorNavigator7のモバイル機器の測色機能にその測色器が対応しているかどうか店の人に聞いた方が良いでしょう。
作業の手順
手順1 モバイル機器の表示色を測色する
スマホやタブレットの画面が測色中に消えると困るので、自動ロックや明るさの自動調整をしない設定にしておきます。
ColorNavigator 7を起動します。
[ ツール>デバイス測定 ]と進みます。
新規測定をクリックします。
測定パッチを選びます。
iPadなどのディスプレイならマトリクスタイプのプロファイル用「26パッチ」あたりが無難なようです。
3D-LUTタイプは精度は高くても時間がかかります。「3D-LUTの7×7×7-低精度」で20分くらいかかります。
次へ進みます。
測色器をパソコンに接続し、測定器の欄で測定器を選択します。
次へ進みます。
画面の指示に従い、測色器を白色板に置いて測色器のキャリブレーションをします。
画面の指示に従い、これから測色するモバイル機器をパソコンと同じLANに接続し、モバイル機器のウェブブラウザでパソコン画面で指示されたURLを開きます。
モバイル機器の画面に測色器を設置します。
スマホなどの場合、画面が小さいので測色器がはみ出してしまうかもしれません。その場合はスマホと同じ厚さの本などをスマホの隣に置いて、測色器がきちんとスマホの画面に密着するようにします。
画面の指示に従い、測色を進めます。
測定が完了したら、画面の指示に従い、測定結果に名前を付けて保存します。
手順2 測色結果からモバイル機器の表示特性を示すICCプロファイルを作成する
[ツール>デバイス測定]と進み、測定結果の欄で先ほど保存した測定結果を選択します。
右クリックして[エクスポート>ICCプロファイル]と進み、名前を付けてICCプロファイルとして保存します。
ICCプロファイルの名前は英数字だけにしておいた方が無難です。
手順3 完成したICCプロファイルを目標にしてモニターキャリブレーションを行う
完成したモバイル機器のICCプロファイルをキャリブレーション目標に設定して、モニターキャリブレーションを行います。
これでモバイル機器の画面で表示した状態がある程度再現されます。
キャリブレーション目標の新規作成へ進みます。
「使い方選択」で「他の表示デバイスと色を合わせる」を選択して次へ進みます。
作成方法選択で「ICCプロファイルを読み込む」を選択し、次へ進みます。
「ICCプロファイル選択」で先ほど作成したモバイル機器のICCプロファイルを選択します。
画面の指示に従い、目標名をつけるなどして、目標を保存します。
キャリブレーション目標として「印刷 5000K」などのプリセットではなく今作成したキャリブレーション目標を選択し、モニターキャリブレーション作業を行います。
以上で、測定したモバイル機器の画面表示をある程度再現した状態になりました。
以上、EIZO®のカラーマネジメントモニターとキャリブレーションソフトColorNavigator 7を使って、パソコン画面でスマホ等のモバイル機器のディスプレイ表示を再現する方法を紹介しました。
参考記事