パソコンで写真のレタッチや、印刷用のレイアウトデータ作成などを行う場合、ディスプレイ表示をできるだけ正確にするため、また手元の写真や原稿の色を確認するために部屋の照明にも気を使う必要があります。
しかし、色を扱う仕事をしているのでなければそれほど手間や費用をかける余裕がないことが多いでしょう。
ここでは、パソコンで写真のレタッチなどを行う場合の部屋の照明について、色評価用の照明を用意しないまでも、少し改善する方法をご紹介します。
照明の光についての基本的な事項
照明を選ぶにあたり、知っていると便利な照明の光に関する基本的な事項をご紹介します。
照明の色について
物体の色は、その物体を照らす照明の色によって変わってしまいます。
そのため、人それぞれ好みの照明を使っていると、同じものを見ても違う色に見えてしまいます。
そうなると色について話したり作業したりするとき支障があるので、照明の色の基準がいくつか決めてあります。
同じ基準の照明を使っている人同士なら、同じ物を見れば同じ色に見えて便利です。
照明の色の表し方
昼白色、昼光色
蛍光灯やLEDランプのカタログなどでは、照明光の色を昼白色、昼光色などで表しています。
昼白色は晴れの日の日中のような色です。
色温度でいうと5000Kくらいです。
昼光色は、昼白色よりは少し青白い北向きの外のような色です。
色温度でいうとたいてい6500Kくらいです。
中には6700Kくらいの製品もあるなど、昼光色と書かれていても製品によって色に少し差があります。
参考記事
参考 色温度の例
1200K | ろうそく |
---|---|
2800K | 夜明け、日暮れ |
5000K | 一般的な昼光 |
6000K | 明るい正午 |
8000K | 曇りの空 |
照明の演色性について
太陽の光には色々な波長の光が満遍なく含まれています。
人工の照明の光にも色々な波長の光が含まれています。
光源にはできるだけ全ての波長の光が満遍なく含まれていた方が、物の色が正確に見えます。
含まれる光の波長が偏っている照明は演色性の低い照明で、できるだけ満遍なく含まれているほど演色性が高い照明ということになります。
演色性の目やす 演色評価数
演色性を表す演色評価数は、基準に決めた光源の光で物を見た時と比べて、色の見え方がどのくらい似ているかを示している数字です。
私たちは太陽の光の下で長年暮らしているので、理想の見た目は太陽の光の下で見た色です。そのため、演色性について考えるときに外の自然の光を基準の光源とすることが多いです。
外の自然の光を基準にした場合、昼間の屋外の光が演色評価数100ということになります。
道路の街灯の光などは、昼間の屋外で見た場合とはかなり色が違って見えて、演色性が低い照明ということになります。
平均演色評価数(Ra)は、いろいろな色に関する演色評価数を平均した数値です。
照明のカタログなどには平均演色評価数が掲載されています。
平均演色評価数が高くても、例えば赤に関してだけは演色性が低い、などといった場合もありえます。
ですが家庭で使う照明ならそこまで気にしなくても良いでしょう。
実際の照明の選び方の例
例1 色は昼白色、演色性はRaができるだけ高い照明を選ぶと良い
パソコン画面とプリンターの色を合わせることを意識して、かつ家庭用で手に入りやすい一般的な照明を使うとすれば、以下のような条件の照明を選ぶと無難です。
- 色:昼白色(5000K前後)、演色性:Ra80以上
このような基準で照明を選ぶと、印刷業界などで使っている照明の規格と少し近くなります。
演色性がRa80以上の製品はかなりたくさんあります。
Ra90以上となるとかなり少なくなります。
日本印刷学会推奨規格で決められている照明の条件
日本印刷学会推奨規格で、写真などを観察するときの照明の色と演色性について以下のように決められています。
- イルミナント
- CIE昼光D50
- 平均演色評価数Ra
- 95以上
- 特殊演色評価数Ri
- i=9〜15それぞれについて90以上
大まかに言うと、色温度およそ5000K、演色性ができるだけ高い照明、というような内容です。
参考記事
モニター表示も5000Kに調整した方が良い
昼白色の照明で作業を行う場合、パソコンのモニター表示の白色点の色温度も5000Kに調整した方が良いでしょう。
照明の色温度とモニターの色温度を同じにした方が、カラーマネジメントを行う上で何かと作業がしやすいです。
参考記事
例2 色は昼光色、演色性はRaができるだけ高い照明を選ぶ
ウェブサイトに掲載するための写真を扱うなら、以下のような昼光色の照明を使うのも良いでしょう。
- 色:昼光色(6500K前後)、演色性:Ra80以上
現在、標準色空間としてsRGB色空間があり、色々な環境の人がアクセスするウェブ上のデータはたいていsRGBで表示する前提で作ってあります。
sRGBは白色点の色温度が6500Kくらいの色空間です。
そこで、ウェブ用の写真を扱うなら昼光色の照明を使うとsRGBの色空間と近いので何かと作業がしやすいです。
参考記事
モニター表示も6500Kに調整した方が良い
昼光色の照明で作業を行う場合、パソコンのモニター表示の白色点の色温度も6500Kに調整した方が良いでしょう。
照明の色温度とモニターの色温度を同じにした方が、カラーマネジメントを行う上で何かと作業がしやすいです。
参考記事
具体的な照明機器の例
5000Kくらい、Ra80以上の製品の例
上記の機種は調光可能な機種ですが、それほど厳密な用途でなければ「白」と「暖」の中間の色の光にしておけばだいたい5000Kに近い色になるでしょう。
「まなびのあかり」というモードにすると平均演色評価数Ra92くらいになるということです。
「まなびのあかり」のモードにしたときに色温度がどのくらいになるのか詳しくは分かりませんが、家庭で使うならそれほど厳密でなくても良い場合が多いと思うので、写真などを見るときにも「まなびのあかり」は便利そうです。
6500Kくらい、Ra80以上の製品の例
上記の機種は調光可能な機種ですが、一番色温度が高い方に調整するとだいたい6500Kくらいの色合いになるでしょう。
「まなびのあかり」というモードにすると平均演色評価数Ra92くらいになるということです。
「まなびのあかり」のモードにしたときに色温度がどのくらいになるのか詳しくは分かりませんが、家庭で使うならそれほど厳密でなくても良い場合が多いと思うので、写真などを見るときにも「まなびのあかり」は便利そうです。
以上、パソコンで写真のレタッチなどを行う場合の部屋の照明について、色評価用の照明を買わないまでも、少し改善する方法をご紹介しました。
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