業務向けのカラーマネジメント関連の機能がある複合機なら、2色印刷用のデータに特色インクを適用して出力できるものもあります。
そのような機器がなく、普通のインクジェットプリンターで特色インクを適用した色で出力したいケースもあるでしょう。
ここでは、2色印刷用のデータに特色インクを適用し、普通のインクジェットプリンターで出力する方法をご紹介します。
なお、この説明ではAdobe®のソフトを使います。
2色印刷をシミュレーションしてプリンター出力する作業の流れ
全体の作業の流れは以下のようにします。
- PDFファイルなどのシミュレートしたいデータを画像データ化する
- 画像データに特色インクの色を適用
- 特色インクを適用した画像データを通常のRGB画像に変換
- RGB画像を通常のカラーマネジメントの手順でプリンター出力
特色インクの色でプリンター出力する具体的な手順
手順1 Photoshopのカラー設定でドットゲインを設定
2色印刷のデータを正確にシミュレートするには、印刷の条件に合わせてAdobe® Photoshop®のカラー設定でドットゲインを設定する必要があります。
もしカラー設定でドットゲインを適切に設定しなかった場合、この先の操作で2色印刷結果をシミュレートしても実際の印刷結果と濃さなどが全然違ってしまい、正しくシミュレートできません。
作業用スペースのスポットカラーの欄で、予定している2色印刷のドットゲインを選択します。
ドットゲインがいくらかは印刷を行う印刷所に聞くなどします。
例えばドットゲインが20%くらいであれば、Dot Gain 20%を選びます。
ドットゲインが不明で確認のしようがない場合は、仕方がないので以下のようにしておくと無難な場合が多いです。
コート紙などコーティングされている用紙に印刷する予定ならドットゲイン15%にしておきます。
新しい印刷設備でコート紙に印刷するなら、だいたいドットゲイン15%前後で印刷していることが多いからです。
上質紙などコーティングされていない用紙に印刷する予定ならドットゲイン25%くらいにしておきます。
上質紙のオフセット印刷ならだいたいそのくらいのドットゲインの場合が多いと思われるからです。(必ずしもそうとは限りません)
ドットゲインを正確に扱うのは難しい
同じような条件で印刷しても、用紙が変わればドットゲインは変わります。
同じ用紙でも、枚葉オフセット印刷とオフセット輪転機の印刷ならドットゲインは違います。
同じ用紙で同じ印刷設備で印刷しても、毎回ドットゲインが同じくらいになるわけではないので、調節しながら印刷しています。
上質紙の印刷といっても、オフ輪でコーティングされていない用紙に印刷した場合、ドットゲイン25%前後ではなく17%くらいで印刷されるということもあります。
よって、あくまでプリンター出力は完璧に印刷結果を再現しているわけでなく、雰囲気を見るための参考資料と思っておく必要があります。
手順2 2色印刷用のPDFデータをCMYK画像データに変換する
以下のような2色印刷用のPDFがあり、CMYKのデータのCM版を使って作成していると仮定します。
Photoshopで、PDFファイルを直接開きます。
「PDFの読み込み」のダイアログでの各項目を設定します。
- 選択:ページ
- アンチエイリアス チェックを入れておく
- 解像度:600 pixel/inch くらい
(350dpiだと粗過ぎます。今のパソコンはスペックが高いので600dpiでA3判くらいまでのデータならたいてい支障なく扱えます。) - モード:CMYKカラー
(「CMYKカラー」を選んで開くことで、PDFのCMYK値を変化させずに画像データとして開けます。)
OKをクリックします。
白い部分が透明な画像データとして開かれるので、[ レイヤー > 画像統合 ]と進み、画像を統合します。
[ ファイル > 別名で保存 ]と進み、PSDなどで一旦保存しておきます。
手順3 CMYK画像データに特色を適用する
チャンネルのパネルで、シアンチャンネル、マゼンタチャンネルを複製します。
シアンのコピーのチャンネルをダブルクリックし、チャンネルオプションでスポットカラーを選択し、不透明度0%にし、色のマスをクリックします。
カラーピッカーの画面でカラーライブラリをクリックします。
カラーライブラリのダイアログで、ライブラリの欄でDICなりTOYOなりPANTONEなり、シミュレートしたい特色インクのシリーズ名を選び、シアンチャンネルに適用したい色を選択してOKで決定します。
選択し終わるとチャンネルオプションのダイアログは下図のようになります。
OKで閉じます。
マゼンタチャンネルにも同じように特色インクを適用します。
チャンネルパネルでCMYKチャンネルはすべて目のマークを消します。特色を適用したチャンネルだけ目のマークを入れて表示します。
ここまでで写真は下図のような状態になります。
手順4 特色インクをシミュレートした画像の色をそのままRGB画像に変換
CMYKチャンネルはすべて白で塗りつぶして、チャンネルを複製して特色を適用したチャンネルだけに絵柄がある状態にします。
チャンネルパネルで、CMYKチャンネルはすべて非表示、スポットカラーの色を適用したチャンネルのみ表示状態にし選択しておきます。
[ 編集 > プロファイル変換 ]と進み、AdobeRGBにプロファイル変換します。
操作 チャンネルパネルのパネルメニューから「スポットカラーチャンネルを統合」をクリックします。
特色インクの色が適用された状態でRGB画像に変換されます。
RGB変換前と比べると、明るさ・コントラストが変化してしまっています。
残念ながらこれで限界です。
手順5 通常のカラーマネジメントを使ってPhotoshopからプリンター出力する
特色をシミュレートしたAdobeRGBの画像が完成したので、Photoshopから通常のカラーマネジメントを使った方法でプリンター出力します。
参考記事
注意点 RGB画像に変換すると明るさなどが変わることがよくある
このように、スポットカラーチャンネルの色をRGB画像に変換した場合、明るさなどが変化してしまう場合がよくあります。
よって、上記の方法で作成したRGB画像は特色の2色印刷を完璧にシミュレートしたものではない、と心得ておく必要があります。
特色インクを使った印刷の結果の正確なシミュレートは、印刷会社の製版作業向けの業務用ソフトなどを使わなければできません。
以上、2色印刷用のデータに特色インクを適用し、普通のインクジェットプリンターで出力する方法をご紹介しました。
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