sRGBは国際的な標準色空間です。
デジカメやパソコンなどの色を扱う機器は、初心者向けの設定で使うとたいていの場合sRGB色空間で色を扱うように作られています。
ここでは、sRGBとはどのようなものか大雑把に雰囲気をご紹介します。
※正確で詳しい説明はIECのサイトや関連する団体や学会の資料や色彩工学の本などにあります。
参考リンク
- IEC 61966-2-1:1999/AMD1:2003 | IEC Webstore
- sRGB|INTERNATIONAL COLOR CONSORTIUM
- sRGB色空間と国際標準化|画像電子学会誌|J-STAGE
sRGBは色空間の名前
sRGBは色空間の名前です。
RGB色空間は、簡単に言えば、RGBのデータを表示したときどういう色になるか、ということに名前を付けたものです。
RGB色空間の雰囲気の説明
色々なRGB値が並んだRGBのデータを用意します。
用意したRGBデータを、色々なモニターで表示したり、色々なプリンターで印刷したりしてみます。
すると、データのRGB値は全く同じですが、表示・出力の結果は以下のようにそれぞれ異なる色になるかもしれません。
このように、RGBデータは同じRGB値でも色々な色を示してしまいます。
同じRGB値なのに色がその時々で変わると扱いにくいので、RGB値の色を確定してしまいたい気持ちが出てきます。
例えば「RGB(30,150,200)はどこで表示しても同じ、こういう色である」という具合にです。
そこで、上記のまちまちなRGBの色の中からどれか一つを選び、このRGBデータの色をaiueo色空間と名付けよう、ということにしたものが色空間というものです。
なぜ色「空間」というのか
なぜ色「空間」かと言えば、色はXYZやL*a*b*など3つの成分の組み合わせで全て表現でき、例えばあるモニターで表示できる全ての色を座標で表すと軸が3つの三次元座標上の立体になるからです。
上記の「aiueo色空間」のすべてのマスの色をXYZの座標上に置くと、立体になります。
色をXYZやL*a*b*などで表す方法については色彩工学の本などに説明が載っています。
sRGBは1999年にできた標準色空間
同じRGBのデータを色々な機器で表示したとき、機器によってまちまちな色で表示されてしまうとなると作業しにくいです。
そこで、ごく単純に言うと、一般的なCRTモニターで色々なRGB値を表示した時の色に似た色空間を決めて、sRGBという名前にしました。
※あくまで、ごく単純に分かりやすく言った場合です。本当はもっとややこしいです。
sRGBはIECで「IEC 61966-2-1」として標準化された
sRGB色空間はヒューレット・パッカード社とマイクロソフト社が提案し、IEC(International Electrotechnical Commission)で審議されて、1999年にIEC 61966-2-1として標準化されたということです。
sRGBは上記のように作られている色空間なので、パソコンでカラープロファイルを扱うときに、sRGBカラープロファイルを見ると、名前がsRGB IEC61966-2.1となっています。
参考リンク
sRGB標準ディスプレイの主な特性など
sRGB色空間で表示されるsRGB標準ディスプレイの特性が定められています。
モニターキャリブレーションをするときなどによく名前を聞く主な項目は以下のようになっています。
- 3原色色度
- R(x=0.6400, y=0.3300) G(x=0.3000, y=0.6000) B(x=0.1500, y=0.0600)
- 白色点
- D65(x=0.3127, y=0.3290)
- γ
- 2.2
- 白輝度
- 80 cd/m2
sRGB色空間で作られた機器どうしなら色の受け渡しが楽
sRGB色空間で作られた機器どうしなら、RGB値をどういう色で表現するかすでに決まっているので、受け渡しが楽です。
あまり色について詳しく分からなくても、sRGBで扱っておけばうまくいきます。
sRGBのデジカメで撮影して、sRGBのディスプレイで表示すれば、だいたい思った通りの色で表示されます。
それをsRGBデータを印刷するように作ってあるプリンターで印刷すればだいたい思った通りに印刷されます。
またsRGBデータが持ち込まれる前提の写真プリントの店にプリントを依頼すれば、だいたい思った通りにプリントされます。
参考記事
最近の機器は色域が広くなり、sRGB色空間では狭過ぎるという問題がある
sRGBは昔のCRTモニターの色に近い色です。
現在は表示したり印刷したりできる色域がかなり広いモニターやプリンターなども多くなり、機器が扱える色域に比べてsRGB色空間の色域は狭いという問題があります。
sRGB色空間で表現できない色を表現できる機器など
AdobeRGBを再現可能なディスプレイであれば、sRGB色空間で表現できない色も表示できます。
AdobeRGBやそれを超える色まで出力可能なインクジェットプリンターであれば、sRGB色空間で表現できない色も出力できます。
フィルムカメラで撮影して写真をプリントすると、sRGB色空間では表現できない色もプリントできます。
sRGB色空間より広い色域を持つ機器が、sRGB色空間で色を扱うとどうなるか
sRGB色空間より広い色域を持つ機器で色を扱うとき、sRGB色空間を使って色を扱うと、正常にsRGB色空間で最終出力できます。sRGB色空間でモニター表示したり、プリンター出力したりできます。
ただし、sRGB色空間で色を扱うため、機器自体がもっと広い色域を表現可能でもsRGBの色域でしか表示・出力できません。
例えば、AdobeRGBの色域を表示可能なディスプレイを使ったとしても、RGBデータをsRGB色空間で扱っているならsRGBの色域でしか表示されません。
色とデバイスの色域の関係を、音楽と楽器に例えてみる
例えばAdobeRGBに近い色域を再現できるモニターやプリンターを使ってsRGBのデータを扱うということを楽器にたとえてみると、例えば7オクターブの範囲の音を出せる楽器で真ん中あたりの何オクターブ分かだけを使って演奏し、それ以外の音は全く使っていないようなものです。
sRGB以外の色空間を合わせて使うと色域の狭さの問題を少し解決できる
完全にsRGB色空間だけで作業すると、上記のような色域の狭さの問題でモニターやプリンターなどのデバイスの色表現の性能を生かしきれないことになります。
そこで、印刷やグラフィック関連の業界の場合はsRGB以外の広い色空間を利用して、カラープロファイルでプロファイル変換をしながら色の情報を扱うことでsRGBより広い色域で最終出力を行っています。
ただこの方法はややこしいので、ある程度詳しくなければ難しいです。
色域の広い標準色空間も検討が続いているらしい
現在のsRGBのように、詳しくなくても簡単に扱えて、かつもっと色域の広い新たな標準色空間を作る検討は関連業界や団体で続いているそうです。
そういうものの一つにscRGBがあります。
これはsRGBを拡張して、人の目で見える色以外の範囲まで広げた色空間です。
また、最近はiPhoneなどでsRGBより広い色域が使われはじめ、iPhoneのカメラで撮影した写真はsRGBより広いDisplay P3という色空間のデータになりDisplay P3カラープロファイルが埋め込まれたデータになります。
そのため、最近は世に出回っている画像データでDisplay P3の画像データが増えてきています。
以上、sRGBとはどのようなものかおおまかにご紹介しました。
参考記事